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令和2年(2020年)11月20日(金) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

後期高齢者の患者負担割合原則2割への引き上げに疑義

 中川会長は後期高齢者の患者負担割合のあり方について、日本医師会の見解を述べた。
 冒頭、中川会長は、後期高齢者は一人当たりの医療費が高いことから、年収に占める患者一部負担の割合は、既に十分高くなっていることを指摘。「新型コロナウイルス感染症が流行する中で、患者一部負担割合を引き上げることは、受診控えをより一層促し、後期高齢者の健康に悪影響を及ぼしかねない」として、その引き上げに懸念を示した。
 会見の中では、資料を示しながら、別掲の四つの視点から、後期高齢者の患者負担を原則2割に引き上げることの問題点を、日本医師会の見解を交えながら説明した。
 また、中川会長は、後期高齢者の窓口負担について、公明党の石田祝稔副代表の「少なくとも半分以上が1割にならなければならない」との発言にも触れ、日本医師会と方向性は同じであるとした。
 その上で、「今後、この問題については、厚生労働省社会保障審議会医療保険部会で議論することになるが、高齢者は受診回数が格段に多く、負担が増えると、若年世代とは比べ物にならないほど、負担感が高まることになる。新型コロナウイルス感染症禍で受診を控えている状況で更に負担を増やすことは、これまで国民皆保険下で公的医療保険制度が果たしてきた役割を損なう危険性が極めて高いことを理解して欲しい」として、慎重な対応を求めた。

後期高齢者の患者負担割合に関する日本医師会の見解
  • 応能負担は本来、共助である保険料と、公助である税金によって求められるべきものである。患者一部負担での応能負担は、財務省が言うように「可能な限り広範囲」ではなく、「限定的に」しか認められない。
  • 患者負担割合は「高齢者の医療の確保に関する法律」(高確法)で定められている。後期高齢者は、現役並み所得者は3割負担、それ以外は1割負担となっており、2割といった負担割合を設けるなら、法改正が必要であることから、国民の納得・合意が不可欠である。また、後期高齢者の世代内格差を是正するとしても、それは限定的なものにとどめ、同時に低所得者の負担に配慮する必要がある。
  • 1人当たり医療費は年齢とともに上昇し、逆に年収は低下していく。そのため、患者一部負担が年収に占める割合は上昇していき、特に後期高齢者の患者一部負担は、現状の1割負担でもかなり重い。なお、65~69歳の高齢者の患者負担が重いことも課題である。
  • 後期高齢者の医療費(医科入院外+調剤)について見ると、後期高齢者の年間受診日数は25日前後で、その内、在宅医療の占める割合は年齢とともに上昇するため、後期高齢者が過剰な受診をしているとは言えない。国が在宅医療を推進している中で、適切な在宅医療から高齢者を遠ざけるような政策は容認できない。

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