令和3年(2021年)1月5日(火) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース
コロナ禍における今日の社会経済状況(失業、労災認定、生活保護、自殺)に関して
松本吉郎常任理事
日医定例記者会見 令和2年12月9・16日
松本吉郎常任理事は、コロナ禍における今日の社会経済状況として、(1)失業、(2)労災認定、(3)生活保護、(4)自殺―等のデータを示しながら、日本医師会の見解を説明した。
(1)では、本年10月の完全失業者のうち、「勤め先や事業の都合による離職」は45万人と、前年同月に比べ22万人増加となり、女性の完全失業者数も「15~24歳」を除く全ての年齢階級で、前年同月に比べ増加していることを説明。
(2)では、新型コロナウイルス感染症に関する労災請求件数が、医療従事者等で1705件(医療業では1332件)となっている(なお、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象とされている)とした。
(3)では、生活保護受給者数は令和2年9月現在で204万9409人であり、前同月比マイナス1・1%となっていることについて、雇用調整助成金、生活福祉資金貸付制度の特例貸付や住居確保給付金など新型コロナウイルス感染症に係る各支援措置が効いていると考えられるが、現在の状況が続くと生活保護が増えていく可能性があるとした。
(4)では、月別自殺者数の推移において、本年6月の緊急事態宣言の解除後、自殺者が増加している(図)とするとともに、その要因に関しては、コロナ禍で浮き彫りになった女性の非正規雇用者の失業やDVの相談件数の増加などが、自殺者数の増加に影響している可能性があるとした他、新型コロナウイルス感染症流行の長期化で、生活苦や家庭などの悩みが深刻化していると分析した。
また、医療従事者や介護従事者等は、労災請求情報の内容を見ると従来から精神障害での労災が多いなど、メンタルヘルスの影響を受けやすいハイリスク者とされているが、コロナ禍において過重な身体的・精神的ストレスが加わっていることに懸念を表明。
その他、コロナ禍でのメンタルヘルスへの影響・課題として、テレワークの推進によって新たなストレスが増えるだけでなく、新型コロナウイルスの影響もあり、企業による従業員のメンタルヘルスに関するケアが難しい状況にあること等を紹介した。
更に、今後の見通しとして、失業率が1%増えると自殺者総数が1000~2000人増えるとの報告もあることに触れ、「コロナ感染そのものによる死亡者数よりも、数では大きくなることが想定される。また、失業率増加の後を追って自殺者数が増加することが多いため、雇用を守ることが命を守ることにつながることの啓発、失業者対策等の十分な広報、その不安に対するメンタルヘルスの実施と長期的継続が必要」との考えを示した。
産業医等の支援に取り組む
その上で、同常任理事は、①新型コロナウイルス感染拡大を減らすことが最大の経済対策につながる②そのためにも医療、介護現場を含め、コロナ禍における事業活動の中で、労働者が身体的にも精神的にも健康的に就労継続できる産業保健体制を行政と職場が共同して構築することが必要である③また、倒産や解雇による失業に伴うメンタルヘルス不調者や自殺者の増加対策も求められる―ことを説明し、今後も日本医師会として、社会経済状況を鑑み、産業医の支援等、社会貢献していく姿勢を示した。
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