今号では、4月に延長された特別償却制度に関して、会員の先生方から寄せられた質問に対する宮川政昭常任理事の回答を掲載する。
宮川政昭常任理事
宮川政昭常任理事
Q1設備投資減税が延長されたと聞きましたが、どのような制度でしょうか。
A 本年4月、「高額な医療用機器の特別償却制度」が見直しの上、延長され(詳細Q3参照)、「医師及びその他の医療従事者の労働時間短縮に資する機器等の特別償却制度」及び「地域医療構想の実現のための病床再編等の促進に向けた特別償却制度」が延長されました。
いずれも2年間の措置ですので、設備投資をお考えの先生方には、ぜひこれらの特別償却制度の利用をご検討頂きたいと思います。詳細な内容や手続き等については、顧問税理士等にご相談下さい。
Q2特別償却にはどういうメリットがあるのですか。
A 特別償却とは、設備取得の初年度に通常の減価償却費(普通償却費)に加え、特別償却費を追加で償却できる制度です。設備投資の初年度に係る税負担を和らげ、初期のキャッシュフローを改善する効果があります。
特別償却は、将来の減価償却費を先取りするもので、償却期間トータルでは、償却額の累計は通常の(特別償却を行わない)ケースと同じになります。
なお、特別償却のメリットを受けることができるのは、一定の利益があって法人税(個人は所得税)を納めている医療機関となります。
Q3「高額な医療用機器の特別償却制度」の概要について教えて下さい。
A 「高額な医療用機器の特別償却制度」は従来からの制度で、一定の医療機器(500万円以上)を取得等した場合に取得価額の12%の特別償却ができるものです。対象機器の具体的な品目は厚生労働省の告示で定められています。
全身用CT・MRIで一定のものについては、効率的な配置促進のため一定の要件を満たすことにつき、従前は病院のみが都道府県の確認を得ることが必要とされてきましたが、今回の改正により診療所についても都道府県の確認を得ることが必要となりました。
Q4「医師及びその他の医療従事者の労働時間短縮に資する機器等の特別償却制度」について、制度の概要と対象となる機器等を教えて下さい。
A 医師の働き方改革を進め、医師の健康を確保し、地域における安全で質の高い医療を提供するため、医師・医療従事者の勤務時間短縮に資する一定の機器等について、取得価額の15%の特別償却ができる制度です。2019年4月に新設されました。
対象となる機器等は、取得価額が30万円以上の器具・備品(医療用機器も含む)並びにソフトウエアで、「勤務時間短縮用設備等」に該当するものです。
対象となる「勤務時間短縮用設備等」は広範囲にわたり、類型は図2の通りとなります。また、類型に明示されていないものであっても、従来の製品より3%以上の効率化が認められる等、要件を満たしていれば認められます。
なお、適用には一定の手続きが求められます。
Q5「医師及びその他の医療従事者の労働時間短縮に資する機器等の特別償却制度」を利用するにはどのような手続きが必要ですか。また、個人開業の診療所でも利用は可能ですか。
A 医療機関が本特別償却制度を利用するには、医師の労働時間短縮に向けた「医師勤務時間短縮計画」を作成し、都道府県の医療勤務環境改善支援センターに提出し、確認を受ける必要があります。また、設備供用6カ月後には計画書のフォローアップ(医師の労働時間短縮についての記録提出)を行う必要もありますので、顧問税理士等にご相談の上、手続きを行って下さい。
個人開業の診療所でも、本制度の利用は可能です。対象とする医師の勤務時間を管理していることが前提となります。
Q6「医師勤務時間短縮計画」の作成、医療勤務環境改善支援センター(勤改センター)への提出・確認等が煩雑なように思いますが。
A 医師の働き方改革は先延ばしにできない課題であり、まずは医師の勤務時間管理等から取り組むことが重要です。医師の健康を確保し、地域における安全で質の高い医療を提供するため、手続きに一定の手間は掛かりますが、本制度を活用して設備投資を行うことを積極的に検討頂ければと思います。
Q7「地域医療構想の実現のための病床再編等の促進に向けた特別償却制度」の概要について教えて下さい。
A 地域医療構想の実現のため、地域医療構想調整会議において提出・確認された医療機関ごとの役割及び医療機能ごとの病床数に関する具体的対応方針に基づく病床再編等により、取得または建設をした病院用または診療所用の建物及びその附属設備について、取得価額の8%の特別償却ができます。この制度も2019年4月に新設されました。