中川俊男会長は8月3日、総理官邸で開催された政府と医療関係団体の意見交換に出席し、菅義偉内閣総理大臣に対して、この難局を乗り切るため、医療従事者が一丸となって、新型コロナウイルス感染症に立ち向かう決意を改めて伝えた。 |
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意見交換には政府側から菅総理始め、田村憲久厚生労働大臣、西村康稔新型コロナウイルス感染症対策担当大臣が、医療関係団体からは中川会長の他、日本病院会の相澤孝夫会長、全日本病院協会の猪口雄二会長、日本医療法人協会の加納繁照会長、日本看護協会の福井トシ子会長がそれぞれ出席した。
冒頭あいさつした菅総理は急激な感染拡大が起こっても、医療提供体制を確保し、誰もが症状に応じて必要な医療を受けられるように、入院は重症患者や特に重症化リスクの高い者に重点化するとの方針転換を行ったことを報告。各地域の診療所の医師に対して、「往診やオンライン診療を通じて、国民に適正な医療を提供して欲しい」と述べ、より一層の協力を求めるとともに、政府としても、往診・訪問診療を実施した場合の診療報酬上の評価を手厚くするなどの対応を行う意向を示した。
続いてあいさつした中川会長は、まず、わが国の感染状況について、「全国規模での感染拡大により、昨年の第1波が襲来して以来、最大の危機を迎えており、予断を許さない状況にある」として、危機感を表明。この状況を踏まえて、医療関係団体8団体と「新型コロナウイルス感染症の爆発的拡大への緊急声明」(資料としても提出)を取りまとめ、7月29日に公表したことを報告するとともに、全国的な緊急事態宣言の発令により、全国規模で、より強力な感染拡大防止対策を行うことが緊急的に必要だと主張した。
政府が、感染急増地域での入院を重症者とリスクの高い患者に限る方針を示したことに関しては、「リスクの高い患者として、中等症Ⅱと、自宅では悪化の兆候を早期に把握しにくい中等症Ⅰの一部が適切に含まれていると理解している」とした上で、地域の医師会や医療機関では既にこれらの感染者の病状変化に即座に対応できるよう、より一層の医療提供体制の強化、特に自宅療養への対応に重点を置いた体制整備を進めていることを説明した。
ワクチン接種については、地域の医師会、医療機関では強い使命感を持って、短期間で急速に接種を進めてきたことを報告するとともに、ワクチン接種の重症化予防、感染予防効果が明らかだとして、引き続き、十分かつ安定的なワクチンの供給を求めた。
その他、中川会長は、特例承認された中和抗体薬「カシリビマブ及びイムデビマブ」(ロナプリーブ)についても言及。「現在の感染爆発の状況下においては、十分な薬剤量を確保した上での、使用要件の緩和に同意する」とした上で、「アナフィラキシーなどの副反応や安全性についての慎重な検討とともに、投与後、一定時間の経過観察が可能な病院などで、外来への使用の知見を早急に蓄積・検証し、外来や在宅等でも柔軟に使用ができるようにしてもらいたい」と述べた。
その後に行われた意見交換では、中川会長が入院に関する政府の方針転換について、「全国の医療現場では、中等症の人が入院できなくなることで、急変の兆しの発見の遅れが頻発し、死亡者が急増することを心配している」と現場の懸念を伝えるとともに、リスクの高い患者には中等症も適切に含まれると考えてよいか改めて確認。これに対して、田村厚労大臣は「中等症Ⅱは当然だが、Ⅰに関しても医師が重症化のリスクが高いと判断すれば入院することになる」として、理解を示した。
中川会長の指摘を受けて中等症の考え方を明確化―厚労省
なお、厚労省は8月5日、中川会長の指摘を受けて、8月3日付け事務連絡「現下の感染拡大を踏まえた緊急的な患者療養の考え方」の追加資料に、中等症の考え方などを追記した資料を作成し、公表した。
追記された資料では、今回政府が方針を示した背景として、国際的にも従来と比較にならない感染力を持つと指摘されているデルタ株の拡大があることを説明。入院に関しては、「重症患者、中等症患者で酸素投与が必要な者、投与が必要でなくても重症化リスクがある者に重点化」とするとともに、入院の可否は最終的に医師の判断によることを明記している。
また、こうした考えは、感染者急増地域において幅広い対応を可能とする新たな選択肢であることを示し、その判断は自治体が行うことを明確化した。
問い合わせ先
日本医師会健康医療第2課 TEL:03-3946-2121(代)