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令和3年(2021年)9月20日(月) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

「医師における宿直許可の取組に関する調査」結果について

日本医師会定例記者会見 8月25日・9月1日

 松本常任理事は、日本医師会が実施した「医師における宿直許可の取組に関する調査」の結果を報告した。
 本調査は、2024年度から医師の働き方改革の諸課題の中で宿日直許可の取得が最も重要な課題となることから、令和元年7月以降に医師の宿直許可の申請・相談を行った事例の収集を行うことを目的に、本年4月28日から5月31日を調査期間として、全国8221病院及び6418有床診療所を対象に行ったものである。
 同常任理事は、「調査票を送った医療機関のうち、宿直許可を得る必要がない医療機関や令和元年7月の厚生労働省の通知以前に許可を取得済みの医療機関は調査対象外となっているために、回答数は168病院及び8有床診療所と少なくなっている」とした上で、主な調査結果を以下のとおり報告した。

【医療機関の地域・病床規模・機能】

 地域別では中部、九州、関東甲信越の医療機関が6割弱(56・2%)となっており、病床規模別では200床未満の病院の割合が約6割(63・7%)を占め、医療機関の機能では、「二次救急病院」と機能分類に属さない「いずれでもない病院」の割合が多くなっている。

【労働基準監督署へ申請・相談の結果と宿直頻度、宿直医師の業務、宿直類型】

 約6割弱の医療機関で「労働基準監督署の宿直許可を得た」と回答しており、「許可を得られた」あるいは「許可を得られる見込みである」と回答した医療機関では、医師一人当たりの宿直頻度が「週1回以下」の医療機関が93・3%であり、49・6%の宿直医師が「病棟業務」または「管理業務」を担当する一方、宿直の類型では、宿直医師一人が「管理業務」を行う類型が最も多くなっている。

【不許可となった医療機関からのコメント】

 医師一人当たりの宿直頻度が週1回を超えて許可が得られた医療機関はわずかで、不許可となった医療機関からは「業務量は十分少ないにもかかわらず、週1回の宿直回数を満たすことができないために申請を認められなかった」といったコメントも複数あり、宿直許可基準が厳格に適用されていることがうかがえる。

【許可を得た医療機関と不許可の医療機関の比較】

 病棟及び救急で対応した患者数やその対応に要した時間に大きな違いはなく、業務内容について具体的な判断基準が示されていないことから、「担当労働基準監督官によっても判断が左右されるのではないかと考えられる」とした。
 松本常任理事はこれらの結果を受けて、「地域において大学病院等から派遣される医師によって医療体制を維持している医療機関も多くある。医師の時間外労働時間の上限規制が始まり、大学病院等が時間外労働の上限規制に対応するため、宿日直許可を得ていない医療機関への医師派遣を抑制するようなことが起きれば、地域医療が崩壊することが懸念される」と強調。
 また、産婦人科領域においても、現在、全国の分娩件数の約半数を、大学病院などから宿日直医師の派遣を受けて産科診療所が取り扱っている状況の中で、大学病院等からの医師の派遣が制限されてしまえば、産科診療所での分娩が成り立たなくなるとして、危機感を示した。
 更に、同常任理事は、宿日直基準が厳格に適用されるため、宿日直許可を申請できない医療機関も多いのではないかと分析。「地域医療を維持しながら医師の働き方改革を進めていくためには、宿日直許可の取得が大変重要な鍵となることから、厚労省に対して今後も引き続き柔軟な対応を求めていくとともに、医療機関に対しても情報発信を行っていきたい」と述べた。
 また、産科医療機関に対する宿日直許可については、今年中に日本産婦人科医会と連携して、産科医療機関に特化した全国的な調査を実施する意向を示した。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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