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令和4年(2022年)2月20日(日) / 日医ニュース

「宿日直制限」は「急性期病床削減」の切り札か?

勤務医のひろば

「宿日直制限」は「急性期病床削減」の切り札か?

「宿日直制限」は「急性期病床削減」の切り札か?

 2024年度実施に向けて、「医師の働き方改革」が進められている。
 当院は、長崎県佐世保市の中心地にある、314床の急性期病床と40床の地域包括ケア病床を持つ公的総合病院である。常勤医は60名と少ないが、大学の医局からの派遣による非常勤医のサポートを今後も受けることができれば、医師の時間外労働時間を年960時間以内に抑えるという、いわゆるA水準はクリアできると考えている。
 労働基準法を根拠にした「宿日直許可基準」において、断続的な(ほとんど労働する必要のない)宿直勤務は週1回、日直勤務は月1回を限度とするという制限が、今後、救急医療を維持する上で大きな課題となっている。
 全国的に見ても、「宿日直許可基準」が大きなハードルとなっている病院があるようである。
 令和3年9月、日本医師会は「医師における宿直許可の取組に関する調査」を実施した。この調査は、令和元年7月に宿日直に関する新たな厚生労働省の通知が出た後に、労働基準監督署へ医師の宿直許可を申請・相談を行った医療機関を対象としたものである。回答のあった医療機関のうち、2割の医療機関が不許可または不許可の見込みであったと公表した。
 救急医療を行う病院では、医師の増員と人件費の増加が必須となる。医師の勤務時間制限はタスクシフトで対応可能かも知れないが、一定数の医師の確保が必要となる宿日直許可基準の壁はかなり高い。
 一方、地域医療構想は病床削減の仕組みではないが、同構想における2025年の高度急性期及び急性期病床の必要数の推計53・2万床は、現時点での見込み70・3万床と比べて、まだ17万床ほどの差があるかのように見る向きもある。
 救急医療を行っている医師数の少ない中小病院は「宿日直許可基準」をクリアできず、救急体制を廃止し、急性期病床を削減、場合によっては統合再編されていくというシナリオが、更に進行するのではないかと危惧している。

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