日本医師会定例記者会見 2月9・16日
中川俊男会長は新型コロナウイルス感染症の感染状況や、ワクチン接種、小児への対応などについて日本医師会の見解を説明。病床が逼迫(ひっぱく)している状況において介護施設等のクラスターが発生した場合は、地域によって当該施設で中和抗体薬(ゼビュディ)等を投与できるよう、協力医療機関から医師、看護師を派遣するのも望ましい方策の一つであるとの見解を示した。
冒頭、中川会長は36の都道府県で適用されている(2月16日現在)まん延防止等重点措置の状況に触れた上で、「先行して措置された沖縄県、山口県では、1月19日の重点措置から2週間程度経って新規感染者数が減少に転じており、一定の時間は掛かるものの、重点措置には一定の効果があったものと思う」と評価。しかし、全国的に引き続き緊張感を維持することが大切であるとした。
感染状況
感染状況に関しては、「増加傾向から転じてピークを越えた可能性はあるものの、高止まりの横這いで、当面はこのような状態が続くと考えられ、今後、感染力が高いBA.2系統の拡大状況によっては、更に感染者が増加に転じる可能性もある」との見方を示し、このような中で、全国的に高齢者施設のクラスターが発生していることに言及。
介護施設等でクラスターが発生した場合の対処について、(1)病床が逼迫している状況においては、入所者に対して中和抗体薬等を当該施設で投与する、(2)介護施設等の協力医療機関(特養では配置医師)から医師、看護師を派遣し、入所者の治療対応を行う、(3)協力医療機関が対応困難な場合は、例えば医師会が相談窓口を設置し、当該施設が医師会に相談し、万一のクラスター発生時に派遣を要請する医師や看護師を平時からマッチングしておく―ことも一つの方策と考えられると述べた。ただし、入所者の状態が悪化し、酸素投与が必要となった場合等は、医療機関で入院治療すべきとした。
ワクチン接種
ワクチン接種については、1日100万回以上を達成している一方、地域によっては集団接種会場の予約に空きがあるケースが見られることを指摘。接種券が住民に届いていないことがその一因でもあるとして、「2回目までの接種情報や本人確認ができるのであれば、政府として接種券無しでも接種枠に空きがある会場で接種できるよう、積極的に後押しをして頂きたい」と強調し、個別接種においても、かかりつけ医の判断で接種券無しで接種できるような対応を求めた。
小児への対応
2月10日の基本的対処方針では、2歳以上の小児に対して可能な範囲でマスクを着用することが推奨されたことを踏まえ、「厚生労働省が、無理強いはせず、息苦しさなどの体調変化に十分に注意するようにとの事務連絡を発出しているが、幼児や児童のマスク着用は、本当に慎重にして頂きたい」と注意を呼び掛け、引き続き周りの大人達が感染させないよう注意を払うことが大切であるとした。
また、5歳から11歳の小児用ワクチン接種が始まることに対しては、「日本医師会は、子どもを新型コロナから守ることはもちろんのこと、学びの保障、大切な教育機会の観点からも、小児への接種を推奨する。特に、医療的ケア児の接種を優先することを提案したい」と主張。
小児への新型コロナワクチン接種が「努力義務」とされなかった点についても、オミクロン株の最新の知見が集積され次第、「努力義務」が適用されることが望ましいとの見解を示した上で、「努力義務が今後適用されても、接種を強制されるわけではなく、お子さんご本人と養育者が納得した上で接種することが原則である」として理解を求め、政府には、小児の新型コロナワクチン接種機関に対しても全面的な支援を要請した。
治療薬
新型コロナウイルス感染症の治療薬に関しては、2月10日に、重症化リスク因子のある患者に対する二つ目の経口治療薬として、ファイザー社の「パキロビッドパック」が特例承認されたことを取り上げ、「2月27日までの間を試験運用期間として、約2300医療施設に限定して院内処方で投与されることになっているが、本剤には一緒に飲むと重大な副作用を起こしてしまう併用禁忌の薬が多数あるため、試用期間を設けて慎重に投与することとした厚労省の判断を支持する」と強調。今後、本新薬の使用実績や臨床医が経験した知見が幅広く共有されるよう期待を寄せるとともに、「これからも国を挙げて治療薬の開発を推進して頂きたい」と要望した。
問い合わせ先
日本医師会 健康医療第2課、地域医療課 TEL:03-3946-2121(代)