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令和4年(2022年)11月20日(日) / 日医ニュース

日本記者クラブで「新型コロナウイルス感染症対応を含めた日本の医療提供体制の現状と課題 日本医師会の取り組み」と題して記者会見

日本記者クラブで「新型コロナウイルス感染症対応を含めた日本の医療提供体制の現状と課題 日本医師会の取り組み」と題して記者会見

日本記者クラブで「新型コロナウイルス感染症対応を含めた日本の医療提供体制の現状と課題 日本医師会の取り組み」と題して記者会見

 松本吉郎会長は10月24日、日本記者クラブで「新型コロナウイルス感染症対応を含めた、日本の医療提供体制の現状と課題、日本医師会の取り組み」と題して、記者会見を行った。
 日本記者クラブは、全国の主要な新聞社、テレビ局など、約190社が加盟している非営利の独立組織で、来日する外国の大統領、首相、閣僚や幅広い分野の専門家らが記者会見を行っている。
 今回の松本会長の記者会見も日本記者クラブの招きに応じて行ったものである。
 松本会長は、まず、日本医師会の会務運営に当たっては、4点(①地域から中央へ②一致団結する強い医師会へ③医師の期待に応える医師会へ④国民の信頼を得られる医師会へ)を柱としていること、また、医療政策の実現に向けては、より多くの先生方と共にわが国のより良い医療を実現したいとの思いから、医療現場の意見を踏まえて、医療政策の議論の場に臨んでいることなどを説明した。
 その上で、松本会長は、(1)新型コロナウイルス感染症への対応、(2)地域における面としてのかかりつけ医機能、(3)医療界におけるDX、(4)物価高騰、(5)持続可能な社会保障制度のために―を柱に、日本医師会の取り組みや考えを概説した。

医療資源を重症化リスクの高い感染者に集中させ、健康フォローアップセンターの充実を図るべき

 (1)では、これまでの日本医師会の取り組みとして、①全国知事会と意見交換会を開催するとともに、「感染者の全数把握に代わる仕組みを求める緊急申し入れ」を全国知事会との連名で8月2日に後藤茂之厚生労働大臣(当時)に②「今般の感染拡大を踏まえた今後の対応に関する要望書」を8月19日に加藤勝信厚労大臣に―それぞれ提出したことなどを説明。限られた医療資源を高齢者などの重症化リスクが高い感染者に集中させるとともに、健康フォローアップセンターの充実を図ることが大事になるとの考えを示した。
 今冬の新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの同時期の流行に備えた対応については、①病床確保のため四病院団体協議会、全国医学部長病院長会議、全国自治体病院協議会、日本慢性期医療協会と医療界一丸となって対応するとともに、全国知事会や日本経済団体連合会等とも連携を図っている②国民向け動画「教えて! 日医君! 冬に向けたコロナ対策!」を制作し、日本医師会公式YouTubeチャンネルに掲載している―ことなどを紹介した。
 また、新型コロナウイルス感染症の発生当初、未知の感染症であっただけでなく、マスクなどの医療資材も不足している中で、適切に対応できなかったことと関連付けて、日本のかかりつけ医の仕組みを否定する声があることに言及。「G7各国と比較しても、日本の100万人当たりの累計死亡者数は最も少ない」「G7の多くの国では、流行初期に死亡者が多く発生している」等を挙げて、その考えを否定。その一方で、感染症まん延時には国民から「どこを受診したら良いのか」といった指摘を受けたことも事実だとして、日本医師会として、国民に分かりやすい情報発信をするなど、その改善に努める姿勢を示した。
 その他、松本会長は感染症を始めとする有事における医療についても触れ、地域の医療体制全体の中で感染拡大時に外来診療や在宅療養等を担う医療機関をあらかじめ適切に確保し、明確化しておくことで、国民が必要とする時に確実に必要な医療を受けられるようにしていくべきであると主張した。

医師と国民が平時から身近で頼りになる関係を

 (2)については、「医師と国民・患者間で平時から身近で頼りになる関係をつくることが重要であり、そのために医師(医師会・医療界)自身が変わっていかなければならないことがあれば、積極的に受け止め、国民・患者が相談しやすい環境整備に向けて真摯(しんし)に取り組み、改革を進めていく」と強調。その上で、会内の医療政策会議の下にかかりつけ医ワーキンググループを設けて、かかりつけ医について改めて検討した結果を11月初旬にも公表すること(別記事参照)を明らかにするとともに、定義については日本医師会と四病協で2013年に取りまとめたものと大きく変わることはないとした他、「かかりつけ医は患者にとって『面倒見の良い医師』なのではないか」と自身の考えを説明した。
 また、現在のかかりつけ医機能の診療報酬上の評価については、多くの医療機関が算定できるようにするとともに、「地域における面としてのかかりつけ医機能」を持つためにも、今後更にその評価を充実・強化する必要があるとした。
 (3)に関しては、日本医師会としても安全・安心で、質の高い医療提供のために活用すべきであると考えているとする一方で、解決すべき課題として、「費用負担」「業務負担」などがあるとし、「日本医師会としてもその解決のために積極的に協力していきたい」と述べるとともに、国に対しては、医療現場の負担や混乱が生じないような対応を求めたいとした。
 政府が健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一本化する考えを示していることについては、全国の医療機関から、「健康保険証廃止時に全ての国民にマイナ保険証が行き渡っているのか」「災害時や通信障害により、利用できない場合はどうするのか」など、さまざまな懸念が寄せられていることを紹介。国に対しては、国民への丁寧な説明を行うとともに、医療現場から寄せられた懸念への対応を求めた。
 その他、来年1月から電子処方箋(せん)が導入されることにも触れ、医師資格証の普及にも取り組んでいく姿勢を示した。
 (4)については、医療機関等でも大きな問題になっており、政府にも6000億円規模の「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」を創設してもらったが、まだ十分ではないとの認識を示すとともに、「今の状況を変えるためにも更なる支援をお願いしたい」と述べた。

政府と連携し医療・介護提供体制の課題解決に取り組む

 (5)に関しては、「社会保障は、自助(患者負担)・共助(保険料)・公助(税)で成り立っていることを踏まえれば、患者負担を増やすことばかりでなく、それぞれのバランスを取りながら、時代に対応できる給付と負担のあり方という視点に立って議論することが求められる」と主張。
 財源については、例えば保険料率が10%よりも低いところは10%にまで引き上げる、2021年度では約516・5兆円あるとされる企業の内部留保の約1%を給与に回すことで、所得税や保険料等を増やすことなどが考えられるとした。
 また、医療・福祉分野には全国で800万人以上が従事していることから、医療従事者が健康に働くことが、国民の健康につながっていくとして、地域医師会や医療機関も健康経営に取り組む必要があるとした。
 その他、経済財政諮問会議で示された資料で、同時改定が行われる2024年度の自然増は成長実現ベースで9000億円、ベースラインケースで7000億円と試算されていることを紹介し、自然増への対応が重要になるとするとともに、世界的な状況を踏まえて防衛費を増やす考えが示されていることに対して、「防衛費増が社会保障費に与える影響がないように願っている」と述べた。
 更に、松本会長は2024年度以降の医療・介護の提供体制について、「超高齢社会、人生100年時代、都市部での高齢化の進展」「少子化による人口減少、過疎化の加速」「医療・介護に関する需要の変化」「医療・介護の供給体制、担い手の減少」「医療DX、ICT化の進展」「新興感染症の襲来、災害の激甚化、頻発化」などの課題に対応する必要があると指摘。政府と連携しながらその対応に当たっていきたいとした。

座右の銘は「以心伝心」

 最後に、司会者から座右の銘を問われた松本会長は、「以心伝心」を挙げ、その理由については、「日頃から人と人との付き合いを大事にしたいと考えており、今後もいろいろな人々と心と心が通じ合えるような付き合いをしていきたいと思い、この言葉を選んだ」と説明した。

 なお、今回の記者会見の模様は、日本記者クラブのホームページで視聴可能となっているので、ぜひ、ご覧頂きたい。

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