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令和5年(2023年)5月20日(土) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

医薬品の安定供給に係る現状認識と課題

日本医師会定例記者会見 4月26日

 宮川常任理事は、医薬品の安定供給に係る現状認識を示すとともに、解決すべき課題について説明した。
 宮川常任理事はまず、メーカーの行政処分に至った品質問題や、委託製造と受託製造が完全に分離されることの問題点を説明。各メーカーの自主点検の内容にバラツキがあることから、統一的な内容にすることを求めるとともに、一社で限定出荷等が起きた際に他社でカバーしにくい業界構造及び原薬の入手に関する現状にも問題意識を示した。
 次に、こうした医薬品の供給問題の原因は「内的要因」と「外的要因」に分けられると説明。製造管理や品質管理に関する行政処分について、「後発品だけではなく、いわゆる先発品メーカーでも色々な不祥事が起こっている」とした上で、中医協で示された「安定供給確保に関するアンケート調査」の結果を基に、「欠品・出荷停止」と「限定出荷」の状況は全く改善していないと解説した他、「企業によって法令遵守への意識にも差がある」とした。
 また、「内的要因」に関するキーワードとして、「共同開発」と「委受託の完全分離」を挙げ、複数の企業が試験データを共有し医薬品を共同開発し、別々に製品を発売することによって参入企業が多くなることに問題意識を示すとともに、委託製造と受託製造の関係が分離されることにより、製造場所やキャパシティーが分かりにくくなっていると指摘。国の審議会等で改善を訴え続けてきた結果、トレーサビリティーに関しては少しずつ改善してきているとの見方を示した。
 更に、後発医薬品が多品種少量生産となっている現状について、適切に行われればそれ自体に問題はないとする一方で、薄利多売で企業の体力が失われる中、安全管理や品質管理ができない企業が出てきており、それが安価な原料調達を求め、原料の海外依存が高くなる構造につながっていると説明。「製造の効率化を求める程、海外依存度が高くなるため、原薬製造の国内回帰は容易ではない」とした。
 原薬の輸入調達先についても中国やインドなどに大きく偏っている現状を紹介し、原薬の複数ソース化を行うなどのリスクヘッジができていないとした上で、昨年成立した「経済安全保障推進法」には、医薬品のサプライチェーンの強化の方針が含まれていることを説明。欧米は一極集中の見直しを進めており、わが国に関しても、「政策を含め友好国との連携によって、グローバルサプライチェーンの再構築と安定を図ることが業界にとって非常に重要である」と述べた。
 また、製薬業界の再編にも言及。「特許切れの市場で安価な製品を上市し、上市後も売り逃げをせず、安定的に供給し続ける体制を持ち、優良にマネジメントする企業を残す必要がある」と述べ、国内の優良な後発品企業を伸ばすためにも、価値のある後発品を上市できない企業や、売り逃げをする企業を淘汰(とうた)すべきとした他、赤字に至るまでの期間が短い後発品の薬価制度にも問題があるとした。
 宮川常任理事は最後に、医薬品の安定供給のための体制構築は製造販売業者だけの問題ではなく、国の強いリーダーシップによって産業構造を強固なものにすべきであると指摘するとともに、「医療が保険診療で行われている中、こうした問題が起こっていることを広く認識して欲しい」とした。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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