日本医師会定例記者会見 4月26日
松本吉郎会長は、新型コロナウイルス感染症の現況や5月8日以降の類型変更等について、日本医師会の考えを説明した。
松本会長は、まず、5月8日に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類感染症に移行されることを前に、新型コロナウイルス感染症の発生から今日に至るまでを振り返り、「全国の医師や医療従事者等が本来の役割を超えてコロナ対応に尽力し、その結果、コロナによる人口当たりの死亡者数を抑えるなど、国際的に比較しても世界有数の医療の実績を積み上げてきた」として、改めて、全国の医療関係者へ敬意と感謝の意を表した。
次に、新型コロナウイルス感染症の現況について、4月19日開催の厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードでは、「新規感染者数は全国的に下げ止まりの後、足元で緩やかな増加傾向となっている」「過去2年の状況を踏まえると、5月の連休明けに感染が拡大し、その後一旦減少となり、再度夏に向けて感染拡大することがあり得る」との評価が示されたことを説明。
その上で、直近の状況は、病床使用率・重症者病床利用率も全国的に低い水準にあるものの、「連休明け」並びに「再度夏にかけて」感染拡大が懸念されるとして、引き続き注視していくとした。
また、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類感染症に移行されることに伴い、患者発生動向等の把握が定点医療機関からの報告に変わり、感染者数の公表についても、国立感染症研究所が1週間ごとに定点把握の集計結果を毎週ホームページ上で公表することに変更されると説明。定点把握に移行することで、感染再拡大時において、精緻(せいち)な感染者・入院者・死者数のデータ分析ができなくなる可能性に懸念を示した。
その上で、松本会長は、「感染症法上の位置付けが変更されても新型コロナのウイルス性状は変わらない」として、今週末からの連休や夏・冬における感染拡大に備えて、4月21日付で、都道府県医師会長並びに郡市区医師会長に対し、より幅広い医療機関でコロナ患者が受診できる医療提供体制の構築に向けた地域における医療機関の取りまとめや、都道府県移行計画に関する協議、計画の実践への関与など、改めて要請を行ったことを報告。また、今秋に設置される「内閣感染症危機管理統括庁」にも触れ、「引き続き、病院団体や全国知事会などと連携しながら地域の取り組みを支えるとともに、国に対しても必要な対策を求めていく」と述べた。
高齢者施設等での集団発生の防止が重要 ―釜萢常任理事
会見に同席した釜萢敏常任理事は、「今後の予測を立てることは難しい」と述べた上で、見通しの根拠として有効な資料となる「新型コロナウイルス感染症のこれまでの疫学と今後想定される伝播動態」(4月19日開催の同アドバイザリーボードの資料)に関して、自身の見解も交えながらその内容を解説した。
まず、流行の波については「明確な定義は存在せず、各種データ等を後から振り返り整理されるものである」とした上で、「第8波の新規感染者数については、集計方法が変更されたことで正確に把握できていないとの指摘もあるが、第8波においては新規感染者数と死亡者数が増加する一方で、致死率が高くなったとの根拠はほとんど見られない。令和4年9月26日から全数届出の対象者が見直されたことにより、捕捉されていない新規感染者の存在について検討が必要である」との考えを示した。
また、医療機関や高齢者施設等での集団感染の発生が死者数の増加に大きく関与するとの見方を示し、「今後の対策を考える上で、いかにこの問題を改善するかが極めて重要であり、しっかり手当てすべきである」と述べた。
更に、都道府県別の人口規模と人口当たりの死亡者数の関連についても触れ、第1~5波と第8波の人口当たりの死亡者数の傾向に違いがあるとして、その要因を検討する必要性にも言及した。
その他、釜萢常任理事は、今後のわが国の感染状況を予測する上では、イングランドのデータが参考になるとして、イングランドと日本のこれまでの感染状況の推移を概説。「その地域の人口の2%くらいは常に感染しているというエンデミックの状態にあるイングランドに比べて、日本では、第8波で感染のピークが上昇したデータを見ると収束に向かっているとは言い切れない」として、今後も感染再拡大の可能性も推測できるとの見解を示し、その対策として、「医療機関や高齢者施設等での集団発生を極力避けることが重要になる」と強調した。
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