日本医師会定例記者会見 6月21日
釜萢敏常任理事は、規制改革推進会議のワーキンググループにおけるナースプラクティショナーの議論を受けて日本医師会が実施した、「訪問看護における医師との連絡体制に関する緊急調査」の結果がこのほど取りまとめられたとして、その内容を説明した。
調査は、山形県、東京都、神奈川県、大阪府、岡山県、鹿児島県の6都府県の訪問看護ステーションから抽出した、3386事業所を対象として実施したもので、4月下旬に調査票を発送し、5月19日までにWEBまたはFAXで送ってもらった回答を集計した結果となっている(回答率は42・3%)。
日常の訪問看護の実施において、必要な時に医師との連絡はうまく取れているかとの質問に対しては、「よく取れている」が31・8%、「だいたい取れている」が65・8%、合計97・6%で、ほぼ全ての事業所で連絡が取れていた。
過去6カ月の間に、夜間や週末等における緊急時対応の際に、医師と訪問看護師との連携がうまく取れず、患者さんの状態に重大な影響があった事例があったかとの問いに対しては、重大な影響があったとする事例は、85事業所から116事例が寄せられた(これを回答した全事業所の患者ベースで試算すると、その割合は0・013%となる)。
具体的な患者の症状では、最も多かったのが発熱で41件、続いて疼痛が20件、終末期・看取り関係が13件、脱水が12件、呼吸状態の悪化が8件であった。
重大な影響があった事例を分類すると、「医師との連絡について、時間を要したもの」(23件)、「連絡がつかず救急搬送となったもの」(22件)、「医師からの返事や指示がなかったもの」(6件)で、その他は新型コロナウイルス感染症関係などであった。
夜間や週末等における緊急時対応をスムーズに行うための工夫については、「症状の変化が予測される場合に、事前に薬剤を処方してもらう」が75・2%で、4分の3の事業所で実施されており、その他、「情報ネットワーク等の活用」「投薬・処置について事前の包括的指示の活用」は半数以上のところで行われていた。
訪問看護の現場で医師に理解して欲しいこと、改善して欲しいことについて尋ねたところ、医師との連絡については、大きな病院の勤務医が担当医の場合、連絡が取りにくく、時間外は救急部門への連絡になってしまうといった意見が多く寄せられた。
医師の指示については、訪問看護指示書における明確な指示の記載を求める声や、訪問看護指示書の不備についての指摘などが寄せられた。
また、緊急時の対応について、事務職員を介さずに直接医師と連絡を取りたいという声も多く寄せられた他、「医師側から薬や治療方針が変更になった時にきちんと情報を共有して欲しい」「情報ネットワークに参加して欲しい」「緩和医療をしてくれる在宅医が少ない」「状態変化時は往診して欲しい」といった要望もあった。
これらの結果について、同常任理事は多くの事業所から回答が寄せられたことに感謝の意を表明。「寄せられた意見や要望についてはしっかりと受け止め、日本医師会として真摯(しんし)に対応していかなければならない」と述べた。
その上で、今後については、日本医師会として、(1)在宅医療に携わる医師を増やしていく、(2)医療DXの利用をより積極的に進める、(3)一人の医師が24時間365日対応することは不可能であるため、後方病院等との連携を図りながら、バックアップ体制の構築を進める―ことに取り組んでいく決意を表明。(3)については、連携を進める上で地域の医師会が果たす役割は極めて大きいとし、都道府県・郡市区等医師会に対して、理解を求めていく考えを示した。
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