閉じる

令和5年(2023年)9月6日(水) / 「日医君」だより / プレスリリース

インボイス制度への対応について

 本年10月から消費税のインボイス制度が始まることを受けて、松本吉郎会長は9月6日、記者会見を行い、全国の医師会及び医師会員における自治体または保険者の健診等委託事業に関し、インボイスの適用関係や注意すべき事項について説明を行った。

 松本会長は、「医療機関においては、健診などの課税売上で、かつ、売上の相手先が課税事業者である場合には、インボイス対応が必要になる場合が出てくる」とした上で、自治体等の委託事業に関し、医師会を通して決済をしている場合について、(1)医師会による「取次ぎ」である場合と、(2)医師会による「直接受託」で、医師会の「課税売上」としている場合に分けて、その対応を説明。

 (1)については、1.医師会としては当該委託料についてインボイスの発行も保存も不要である(ただし、医師会が手数料を受け取っている場合は、必要に応じてインボイスを発行することになる)2.一方、医療機関側では、医療機関が課税事業者で自治体または保険者からインボイスを求められた場合には、医療機関からインボイスを発行することになる3.医療機関が免税事業者等の場合は、自治体・保険者からインボイス登録の要請や、対価の見直し等の協議が仮にあった場合には、それに応ずるかどうかを検討することになる(現時点で、本会として、そのような事例は把握していない)―ことなどを概説した。また、4.医師会を通さないで決済されている場合の医療機関の対応についても、(1)「取次ぎ」の場合における医療機関の対応が、そのまま当てはまることを付言した。

 (2)については、1.医師会から自治体・保険者に必要に応じてインボイスを発行することになる2.一方で、医療機関が課税事業者の場合は、医療機関から医師会にインボイスを発行してもらうことになる3.医療機関が免税事業者の場合、医師会からインボイス登録の要請や、対価の見直し等の協議が行われる場合も、医師会によってはあるが、その場合、医療機関がそれに応じるか否かは簡易課税制度や、2割特例(売上税額の2割を納めれば済むという経過措置)もあり、その適用も含めて、あくまで医療機関が判断することになる。この場合、医師会側としては、くれぐれも独禁法等に注意し、丁寧に説明し、協議をして、合意することが求められる―ことなどを説明した。

 更に、医師会による直接受託の場合、医師会が収受した委託料全体が医師会の課税売上、医療機関に支払う金額が医師会の課税仕入となるが、その場合、免税事業者からの仕入れは経過措置はあるものの、最終的には仕入れ税額控除ができなくなるため、その分の税金を医師会が納めなければならなくなり、「そのケースが一番注意が必要だ」として、注意事項を詳細に説明した。

 その中で、松本会長は1.地域の医師会が会員にインボイス登録を要請する場合には、医師会として、くれぐれも独占禁止法等に抵触しないようにする。課税事業者になるように要請すること自体は問題にならないが、それに応じなければ価格を引き下げるなどと、一方的に会員に通告するようなことがないよう十分注意する2.同様に、医師会がインボイス未登録の会員に対価の引き下げ等を協議する場合も、独占禁止法等に抵触しないようにする。免税事業者への支払いについても、「当初3年間は8割控除、次の3年間は5割控除できる経過措置があるので、これを活用するなどして、いきなり消費税10%分を引き下げるようなことはせず、会員に丁寧に説明し、協議して、きちんと合意を得ることが必要―と注意を呼び掛けた。

 また、自由診療その他の課税売上が1千万円以下の免税事業者である医療機関が課税売上の相手先である課税事業者からインボイスの発行を求められた場合の対応としては、(1)課税事業者に転換し、インボイス登録を受け、インボイスを発行する、(2)免税事業者のまま、インボイスを発行せず、その代わりに価格交渉として一定額を値引きする、(3)やはり免税事業者のまま、インボイスを発行せず、値引きにも応じない―という選択があることを説明。(1)の場合は、課税事業者になった場合の負担を計算した上で、あくまで医療機関ごとに判断してもらうことになるとした他、(3)の場合については、例えば企業から従業員の健診を請け負っているような医療機関では、相手先の判断によって取引を失う可能性もあることを踏まえて、判断することが必要だとした。

 その上で、松本会長は、医療機関におけるインボイス対応については、本年5月に本会から都道府県医師会に発出した通知やこれまで出してきた通知において、国税庁の資料や、本会作成の資料で詳しく述べている他、委託事業に係るインボイスの関係については8月31日に通知を発出していることを報告。それらの資料も確認するよう呼び掛けた。

 その他、松本会長は、日本医師会で取りまとめた令和6年度の税制要望の中で、社会保険診療等に係る控除対象外消費税については、「診療所においては非課税のまま」「病院においては軽減税率による課税取引に改める」という要望を出していることに言及。「本要望は、診療所においては『非課税のまま』とする要望であり、診療所の多くは免税事業者にとどまることが可能な要望となっており、本要望が診療所におけるインボイス制度の適用に特段の影響を及ぼすものではない」との認識を示した。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる