厚生労働省が9月1日に「令和4年度 医療費の動向」を報告したことを受け、松本吉郎会長は9月20日の定例記者会見で、令和6年度予算編成に向けての現時点の日本医師会の見解を公表。医療費が増加する中においても、コロナ禍による医療費減少のダメージはそのまま残っており、物価高騰などの影響も大きいとして、緊急の経済対策を要望した。
松本会長は、「令和4年度 医療費の動向」について、(1)令和4年度の概算医療費は46兆円、対前年同期比で4.0%の伸び率で、1.8兆円の増加、(2)新型コロナ発生前の対令和元年度比では5.5%増(3年分の伸び率)で、1年当たりに換算すると1.8%の伸び率、(3)対前年度で見ても、対令和元年度で見ても、全ての診療種類別(入院、入院外、歯科、調剤)で医療費はプラス―であったことなどを概説。
これに対し、厚労省からは、4.0%という伸び率は、コロナ前と比べ高く見えるが、令和2年度はコロナで医療費が落ち込んでおり、令和元年度比の1年当たりに換算した伸び率が1.8%であることから、「それ程高いというところでもない」と説明されたことを報告。また、今回の伸びは、令和2年度の受診控えの反動やコロナそのものの治療、令和4年度診療報酬改定で不妊治療の保険適用がされたことなどが主な要因であったとし、「新型コロナウイルス感染症」を主傷病としたレセプトを対象に医療費を合計すると8,600億円で、前年度の2倍弱増加していることを示した。
令和6年度診療報酬改定に向けては、「財務省や支払側が医療費削減やマイナス改定を強く主張してくることが見込まれ、非常に厳しい議論となると考えている」と懸念。
オミクロン株の流行によるコロナ患者数の急拡大に伴い、医療機関の収入が増えた側面もあったとした一方、感染対策経費の増加、追加的人員の確保など、患者数拡大に対応できる体制を築くために投じたコストも上昇したとし、「コロナ禍による医療費減少のダメージはそのまま残っており、単に経営が好調に転じたということではない」と強調した。
更に、昨今の水道光熱費、食材料費等の物価高騰が医療機関のコスト負担に拍車をかけているとし、「診療報酬、介護報酬という公定価格により運営する医療機関・介護事業所等が、物価高騰や賃上げに対応するには十分な原資が必要である」と主張。恒常的な感染症への対応とともに、医療DX等の更なる推進なども図っていく必要があるとし、「まずは、岸田総理が指示するとされている秋の経済対策で対応頂けるよう、日本医師会は病院団体・介護団体と足並みを揃えて近日中に政府・与党等に要望を行いたい」との意向を示した。
その後の記者との質疑応答では、「政府の方針に従い、医療機関においても賃上げを実現したい」として、診療報酬上でもその引き上げを求めていくとした。
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