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令和5年(2023年)11月20日(月) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

病院経営の窮状を説明

日本医師会定例記者会見 10月25日・11月2日

病院経営の窮状を説明

病院経営の窮状を説明

 猪口雄二副会長は11月1日に財務省財政制度等審議会財政制度分科会で社会保障に関する議論が行われたことを受けて、病院の経営状況の現状について説明を行った。
 同副会長は、まず、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会により実施された「2023年度病院経営調査」を基に、2021、2022年度の病院の経常利益は約8割が黒字とはなるものの、新型コロナ関連の補助金(以下、コロナ補助金)を除くと、逆に約6割が赤字に転落することや、2022年の方が赤字幅が大きくなっていることを説明した。
 更に、2022年度と2023年度の6月単月調査の結果にも言及。2022年より2023年の方が赤字幅が大きくなっていることに加え、経常利益に関して、コロナ補助金を加味しても65%が赤字となっていることを強調した。
 また、2022年度の医業収益経常利益率に関するヒストグラムを示した上で、コロナ補助金を加味した場合、利益率0~6%のところに大きな山があるが、コロナ補助金を除くとマイナス4~2%に山が移動することを指摘し、多くの病院が赤字に転落してしまうことを説明するとともに、医業利益率で見ると、赤字となる病院の割合は更に増大することを強調。「2023年10月以降、病床確保等に関するコロナ補助金がほとんどなくなったことを踏まえれば、病院が置かれている直近の状況も同様に厳しいものになっていると考えられる」との認識を示した。
 その他、同副会長は福祉医療機構が2023年10月30日に公表した「2022年度病院経営の経営状況(速報値)」を基に、一般病院、療養型病院、精神科病院の医業利益率は新型コロナウイルス感染症流行以来、低い水準となっていることを説明。特に一般病院と療養型病院は2010年度以来最低の数値で、前者はマイナス1・2%となっていることを強調した。
 また、同調査による①2カ年連続コロナ患者受入実施の同一病院②2カ年連続受入未実施の同一病院―における経営状況の調査結果にも言及。①では、患者一人当たりの入院収益は増加しているものの、それ以上に医療材料費や水道光熱費が上昇、その他の物価高騰も加わり経営費用が増加しているため、コロナ補助金を除くと医業利益率はマイナス4・7%、経常利益率はマイナス2・9%になっていることを説明した。
 更に、②については、調査対象が比較的小規模の病院が中心となっているものの、病床利用率は前年度比でマイナス0・9%、コロナ補助金を除いた医業利益率はマイナス1・5%、経常利益率は0・3%となっており、①、②の結果から見ても、2021年度と比べ経営状況が悪化していることは明らかだと指摘した。
 その上で、同副会長は、「病院の経常利益率は従来より平均1~2%と考えられており、設備投資や老朽化への対応には借入金を充てることが多かったが、この数年間、経常収支が好転したように見えるのは2021、2022年度におけるコロナ補助金による一時的な収益増によるものに過ぎない」と強調。加えて、コロナ補助金を得た病院は今後の新興感染症に対応する病院であることが多いため、人件費や医療器材に多くの費用を要することを指摘した。
 また、コロナ補助金収入は、病院間のばらつきが大きく、そもそも補助金収入を得ていない病院も多くあるとするとともに、物価高騰や人件費増により、病院の経営環境の悪化は明白との認識を示した上で、「入院患者等への食事療養費における差額の解消や、政府が目標として掲げる賃金上昇を実現するためにも、重点支援地方交付金による補助金支給に加え、何より令和6年度診療報酬改定における対応が不可欠である」として、理解を求めた。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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