日本医師会定例記者会見 11月22・29日
「医療従事者の切実な声を伝えたい」として記者会見を行った松本会長は、まず、「医療・介護は、医師・歯科医師・薬剤師だけでは成り立たず、その他多くの医療・介護従事者によって成り立っている」と述べた上で、その内訳を概説。「令和2年医師・歯科医師・薬剤師統計」では、医師は約34万人、歯科医師は11万人弱、薬剤師は32万人強で医療・介護の全就業者数の1割にも満たず、医師・歯科医師・薬剤師以外の医療従事者は約800万人おり、全就業者に占める割合は13・5%程度になるとした。
更に、「その中でも、特に看護補助者(看護助手)については平均給与が、全産業平均と比較すると約3割も下回り、他産業への流出が際立っている」として、物価高騰等により生活に苦しむ医療従事者の給与を全産業並みに引き上げる必要性を指摘した。
また、医療提供者は、患者により良い医療を提供する重要な役割を担っているとするとともに、日本医師会を含む八つの医療関係団体と厚生労働省が11月6日に公表した「ポストコロナ医療体制充実宣言」(別記事参照)において、次の感染症拡大への備えを先手を打って実施するため、新興感染症対応と医療DXの推進を集中的に進めるとされていることにも触れ、「医療機関・医療関係団体は、今後も新興感染症対応を始め、地域医療を守るため頑張っていく」として、その覚悟を示した。
更に、松本会長は、物価が高騰し、賃金が上昇する中で、安全かつ質の高い医療・介護を安定的に提供するためには、医療・介護従事者への賃上げを行い、人材を確保することが不可欠であり、診療報酬の思い切ったプラス改定を行う他はないと指摘。賃上げについては、「どこかを削り、それを財源に回すといった発想ではなく、医療・介護従事者の賃上げを果たすことが重要であり、それが経済の好循環につながる」とした他、賃上げと物価高騰への対応を行うことで、医療・介護従事者の比率がより高い地方を含む国内の経済が活性化され、それこそが地方創生にもつながると強調した。
大幅なプラス改定が必要
その上で、松本会長は、財務省財政制度等審議会が主張するマイナス改定は言語道断であると改めて批判し、「高齢化の伸びのシーリングに制約された従来のような改定では、日進月歩している医療への対応で精一杯であり、30年ぶりの物価高騰、賃金上昇には対応できない」と主張。賃上げへの対応は、診療報酬改定の中において別枠で行う必要があるとするとともに、国民皆保険制度の重要な担い手である医療従事者の更なる流出を招き、ひいては医療そのものが崩壊してしまうことに懸念を示し、「物価高騰・賃金上昇に対する取り組みを進め、国民に不可欠、かつ日進月歩している医療を提供するための適切な財源を確保し、大幅なプラス改定を実現することが必要だ」として、その実現に向けた理解と協力を求めた。
問い合わせ先
日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)