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令和7年(2025年)2月5日(水) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

新年に当たって

日本医師会定例記者会見 1月8日

新年に当たって

新年に当たって

松本会長が挙げた今年の医療界の4つの話題
  • 7月の参議院議員選挙
  • 令和8年度診療報酬改定に向けた議論
  • 医療法等改正による新たな地域医療構想と医師偏在対策
  • かかりつけ医機能報告制度の施行

 松本吉郎会長は新年に当たっての所感を述べるとともに、本年の干支(えと)である巳(へび)が日本医師会のロゴに採用されていることに触れ、巳年は医療と所縁のある年であるとした他、「箱根駅伝の選手達のように、医師会活動に邁進(まいしん)された先人達が襷(たすき)をつないで下さった国民皆保険制度を、日本医師会として次世代にしっかりと継承していく」との決意を示した。
 冒頭、松本会長は、昨年末から年初に掛けて流行したインフルエンザ等の感染症に対して、各地域において年末年始に対応した医療機関に深謝。各地で検査キットや治療薬の不足の声も挙がっていることから、日本医師会としても、改善すべき点があれば国に対してしっかりと対応するよう申し入れたいとした。
 次に、松本会長は、医療界における今年の大きな話題として、(1)7月の参議院議員選挙、(2)令和8年度診療報酬改定に向けた議論、(3)医療法等改正による新たな地域医療構想と医師偏在対策、(4)かかりつけ医機能報告制度の施行―の4点を挙げ、それぞれに日本医師会の考えを示した。

250205b2.jpg.jpg (1)では、今夏の参院選に関して「医療の未来を左右する重要な選挙」であるとした上で、日本医師連盟の組織内候補として擁立することを決定している釜萢敏副会長について改めて言及。「6期11年にわたり日本医師会常任理事、副会長を務め、医師会業務全般に精通している」とした他、「政治に対する造詣(ぞうけい)も深く、地域医療に携わり、幅広い人脈を持つなど、余人をもって代え難い存在である」と述べた。
 (2)では、社会経済情勢が大きくインフレ局面へと変化している中、物価・賃金上昇に診療報酬改定等が追い付いておらず、全国各地で医療・介護・福祉現場の経営が赤字に転じ、ひっ迫の緊急性が増していると指摘。日本医師会が政府・与党に対して働き掛けた結果、賃上げ・物価高騰対応を含んだ令和6年度補正予算が成立し、令和7年度予算案も閣議決定されたことに一定の評価を示した。
 その上で、対応はまだ不十分であり、国民生活等にも支障を来し始めているとの懸念を示し、3点(①診療報酬等②社会保障予算の目安対応③小児医療・周産期体制)の具体的な要望を説明した。
 ①では、物価・賃金の上昇に応じて適切に対応する仕組みの導入を提案した上で、「著しくひっ迫した経営状況を鑑みると、まずは補助金での迅速な対応を求めることになるが、令和8年度診療報酬改定の前に、場合によっては期中改定も視野に入れて対応していく必要がある」とした。
 ②では、「高齢化の伸びの範囲内に抑制する」との取り扱いを廃止し、物価・賃金の上昇を踏まえた仕組みへと改める必要があるとして、「医療・介護業界でも他産業並みの賃上げが実現できるよう、骨太の方針に向けて、引き続き別次元の対応を働き掛けていく」と主張した。
 ③では、著しい人口減少により対象者が激減していることに触れ、この問題は産科や小児科などの患者数の減少だけではなく、将来の医療の担い手の減少にも影響してくる問題であると指摘。今後、何らかの強力な方策が必要であり、検討を進めていくべきとの考えを示した。
 (3)では、「新たな地域医療構想等に関する検討会」の「医師偏在対策に関するとりまとめ案」にその文言がたびたび使用されるなど、「地域の実情」を重視する考え方が盛り込まれたことを評価。また、日本医師会が昨年8月に医師偏在対策に対する考えを公表した結果、議論が進み、厚生労働省から「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」が公表されたことに改めて言及し、①日本医師会の考えが踏襲され、「医師偏在は一つの取り組みで是正が図られるものではない」として、「経済的インセンティブ、地域の医療機関の支え合いの仕組み、医師養成課程の取り組み等の総合的な対策」を基本的な考え方としている②若手医師だけでなく、全ての世代の医師へのアプローチも謳(うた)っている―ことは評価できるとした。
 その一方で、外来医師過多区域で、地域で不足している機能を担わない医師に対し、要請・勧告・公表、保険医療機関の指定期間の短縮が掲げられたことに関しては、「罰則的な対応ではなく、日本医師会としては、外来医師過多区域か否かにかかわらず、かかりつけ医機能を推進し、地域で不足している機能を面で支えていくためにも、多くの先生方に参画してもらう取り組みを進めていくべきと考えている」と主張した。
 (4)では、本年4月よりかかりつけ医機能報告制度が施行されるが、初めてのかかりつけ医機能報告は、医療機能情報提供制度に基づく報告と併せて、令和8年1~3月頃が見込まれており、本制度の目的は、地域の医療事情に応じて各医療機関が機能を高めていくことにあり、医療機関がどのような機能を担っているかを報告してもらうことから開始し、地域全体でどのような機能があるのか、不足している機能があるとすればどのように対応していくかを検討することになると概説。地域における面としてのかかりつけ医機能を発揮するためにも、かかりつけ医機能報告制度に、より多くの医療機関に手を挙げて参加してもらうことが極めて重要との考えを示した。
 その上で、松本会長は今後について、4点を始めとした医療界の重要課題に関して、都道府県・郡市区等医師会や会員の先生方に対して、担当理事連絡協議会の開催や日医ニュース等を通じてしっかりと情報を発信していくとした。
 更に、1月7日には全国医学部長病院長会議と国立大学協会と共に、福岡資麿厚労大臣に要望を行ったこと(別記事参照)を明らかにし、「このように医療界が分断することなく、一致団結して対応していく」と強調した。

「物価・賃金上昇にタイムリーに対応する仕組み」の導入に関する中医協での議論を要請―長島常任理事

 診療報酬に物価・賃金の上昇に応じて適切に対応する仕組みを導入する件については、1月15日に開催された中医協総会において、入院時の食費の基準の見直しに関する諮問がなされた際にも長島公之常任理事が言及した。
 その中で、同常任理事は、物価高騰や賃金上昇に診療報酬が追い付いていない状況にあるとした上で、物価・賃金上昇にタイムリーに対応する何らかの仕組みの導入が必要ではないかと指摘。今後の対応について、中医協で議論することを求めた。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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