松本吉郎会長は1月7日、相良博典全国医学部長病院長会議会長(昭和大学病院長)、永田恭介国立大学協会長(筑波大学長)、原晃筑波大学執行役員・特命教授と共に厚生労働省に赴き、福岡資麿厚労大臣と会談を実施した。
まず、相良会長は、(1)大学病院の実績、(2)高度医療の実践、(3)大学病院における医師派遣の状況、(4)大学病院の経営状況、(5)次期診療報酬改定に向けた支援―について説明。
(1)、(2)、(3)では、大学病院が、主に教育や研究及び医療による貢献と、学部教育や卒後教育、卒後臨床教育等の受け入れで大きな役割を果たすとともに、臓器移植や高難度手術及び難病患者の受け入れ等を実施していることを説明。更に、地域医療を支えるため、令和5年6月時点で4万人を超える医師を常勤医師として全国に派遣したことなどを紹介。医育機関としてのみならず、地域の基幹医療機関としても大きな役割を果たしていることを強調した。
また、(4)では、2023、2024年度の医業収入及び医業費用をそれぞれ比較した資料を基に、収入は増加しているものの費用がそれ以上に増加し、医業利益は対前年度比で、1大学平均・月額換算で約4,800万円悪化していることを報告。それらに加えて、患者数が減少傾向にあることにより、診療単価が上がったにもかかわらず、医業収入は減少していることを併せて説明した。
その上で、公定価格で運営される医療機関は物価高騰分を診療費用に転嫁できないことが根本的な問題と指摘し、診療報酬にも物価に応じた対応を要望した。
原特命教授は、筑波大学附属病院の事例を基に、令和2~6年度に掛けて診療経費を始め、光熱量、人件費や委託経費等が年々上昇していることを報告。大学病院が医師派遣を維持するためには、厚労省の「勤務環境改善医師派遣等推進事業、地域医療勤務環境改善体制整備特別事業」(区分VI)の更なる拡充が必要と訴えた。
永田会長は、筑波大学長として、附属病院で生じる赤字が、人文科学分野に投資すべき教育研究費で補われていることを説明し、地域医療に貢献するために他の分野が犠牲になっている状況を問題視した。
松本会長は、「この状態が続けば、地域医療を支える医療機関が、今後ますますひっ迫した状況になっていく」と述べるとともに、地域の医療提供体制はいったん破綻してしまえば、建て直すのは非常に困難であることを強調。そのような事態を避けるためにも、国からの適切な財政支援が欠かせないと指摘した。
これらの説明・報告を受け、福岡厚労大臣は、大学病院はもちろん、地域医療を支える医療機関が厳しい経営状況に置かれていることに一定の理解を示した上で、新たな地域医療構想を進めるにしても、その前に医療機関が倒れてしまっては本末転倒との認識を示し、補助金や基金などを必要な現場に届く、使い勝手の良いものにできるよう努めていきたいとした。
また、地域医療構想の見直し、医師偏在対策を進めることは必要であるものの、大学病院を始めとする各地の医療機関が今後も地域医療を支え、医療提供体制を維持していくためには、何より財源の裏付けが重要であるとの認識を示し、今後も厚労省と医療界が協力して、その財源を求めていくことを確認した。
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