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令和7年(2025年)2月20日(木) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

阪神・淡路大震災から30年経過したことを受けて

日本医師会定例記者会見 1月22日

阪神・淡路大震災から30年経過したことを受けてc

阪神・淡路大震災から30年経過したことを受けてc

 松本吉郎会長は、去る1月17日に阪神・淡路大震災発生から30年の節目を迎えたことについて言及。6000名を超える犠牲者の方々に改めて哀悼の意を示した。
 また、同日に神戸市で開催された追悼式典に出席された天皇陛下が、震災の経験と教訓を基に、安全で安心して暮らせる地域づくりが進められ、次の世代へと引き継がれていくことを期待すると述べられたことにも触れ、日本医師会としても、これまでの震災から得た教訓を生かし、日本医師会災害医療チーム(JMAT)の体制強化を図るなど、これからも、日本の災害医療の充実に寄与していくとの意向を強調した。
 松本会長は阪神・淡路大震災の発生当時、まだJMATは無かったものの、日本医師会として大阪府医師会に現地本部を設けたことや、被災地の要望に応じて逐次派遣できるよう、全国の都道府県医師会に医療チームの編成を要請したことなどを報告。その他、義援金の募集や被災地の医療機関の再建支援、診療報酬の概算払いなどを国に要望した他、村瀬敏郎日本医師会長(当時)は、被災地への訪問や兵庫県知事との協議も踏まえ、「日医ニュース」に「医療機関の再建とかかりつけ医機能の保持」「医師会の組織的活動の理解促進」「情報通信網の確保」など、現在にも通じる考えを示していることを紹介した。
 更に、「阪神・淡路大震災への対応は、日本の災害医療の原点となった」と述べ、日本医師会も参画して、地方防災会議への医療関係者の参加促進の他、後の"EMIS"である広域情報システム、災害拠点病院、DMATに当たる自己完結型の医療チームなど、今の体制の基礎となる提案がなされ、実行に移されてきたとの認識を示した。
 更に、松本会長は、阪神・淡路大震災以後の2004年の中越地震、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震、2024年1月の能登半島地震などにも触れ、「これらの大きな地震の度に想定外の事態が発生したものの、その都度、対策が講じられ、日本の災害医療体制はアップグレードされてきた」と述べた。
 その例として、東日本大震災以降、多くの避難者が長期の避難生活を強いられることによる災害関連死への対策が重要視されるようになったことを強調。また、日本医師会も含め、さまざまな派遣元が多数の医療チームを被災地に派遣するようになったことで、それらをコーディネートする機能が必要とされるようになったことを受け、2014年から日本医師会(共催)、日本赤十字社、国立病院機構により「都道府県災害医療コーディネーター研修」が実施され、多くの修了者を出していることを紹介した。
 また、JMAT活動については、東日本大震災の際に1398チームを被災地に派遣したのが最初であるが、その実績が評価され、2014年には医療関係団体で唯一、日本医師会が災害対策基本法上の指定公共機関に指定されたことや、人工衛星を利用した防災訓練、関係学会・団体等との連携などを着々と進めており、今後もJMATの体制強化に努めていくとの意向を示した。

最終目標は被災地に医療を取り戻すこと

 その上で、松本会長は日本医師会の災害医療の考え方として、「平時と同じく国民・被災者の命と健康を守ること」にあり、その最終目標は「被災地に医療を取り戻すこと」であると強調。そのために、(1)中央防災会議への参加などを通して、国や地方の防災行政における位置付けを高める、(2)災害発生直後の急性期対応だけでなく、その後の医療支援も重要との主張を続ける、(3)大規模かつ広域災害に備え、さまざまな職種・業種の関係者の連携を推進する―ことに努めているとした。
 また、その一環として、昨年6月の中央防災会議において、岸田文雄内閣総理大臣(当時)を始め、出席した全閣僚に対し、「次の災害は、少子・超高齢社会、インフラ劣化等でより深刻になる。さまざまな業種が連携し、医療を中心とした災害に強いまちづくりや、国を挙げてのオールアプローチで、どの災害にも対応できる体制を検討すること」を申し入れたことを紹介した。
 その他、阪神・淡路大震災発生当時、多くの会員医療機関が被災した兵庫県医師会について、その後の災害に際しては多数のJMAT派遣ばかりでなく、統括JMATによるチームの配置調整や指揮を取ってもらっていることに言及。「JMAT研修においてもインストラクター、ファシリテーターを派遣するなど、医師会の災害医療活動を力強くけん引する大変大きな力となっている」とし、感謝の意を示した。
 最後に松本会長は、昨年は南海トラフ地震の臨時情報が発表され、先日には30年以内の発生率が80%に引き上げられたことにも言及。日本医師会として、今後も全国の医師会と共に災害医療の充実に取り組み、国民の命と健康を守るとの決意を改めて表明した。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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