日本医師会定例記者会見 5月16日
経済成長の果実を社会保障に活用すべき
松本吉郎会長はまず、5月12日に自由民主党社会保障制度調査会、5月14日に国民医療を守る議員の会(自民党議員連盟)、公明党の社会保障制度調査会等において、「骨太の方針2025」の策定に向け、(1)経済成長の果実の活用、(2)「高齢化の伸びの範囲内に抑制する」という社会保障予算の目安対応の見直し、(3)診療報酬等について、賃金・物価の上昇に応じた公定価格等への適切な反映、(4)小児医療・周産期医療体制の強力な方策の検討―の四つの項目を主張してきたことについて改めて会見でも訴えた。
その上で、令和7年度の消費税増収額が16・3兆円と令和4年度に比べて2兆円増加しているが、増収分のうち1・7兆円は「後代への負担のつけ回しの軽減」として使われ、社会保障の充実には0・09兆円しか使われておらず、国民は消費税による社会保障の恩恵を実感できていないと指摘。「消費税収は社会保障に充てるとされており、経済成長の果実である消費税の増収分を社会保障に活用すべきである」と強調した。
国民医療を守る議員の会の決議は極めて重い
次に、松本会長は医療機関の経営がかつてなく厳しい状況であり、経営努力の限界をとうに超えていることを説明。3月12日の6病院団体との合同記者会見において「ある日突然、病院が無くなる」と訴えたが、実際に兵庫県伊丹市の地域医療支援病院が年度内での診療休止を検討しているとの報道があったことを挙げ、「恐れていた事態は起きようとしているのではなく、既に起きている。医療機関は言わば『限界まで乾いた布』のような状況にあり、いくら絞ったところでもう水は出ない。診療報酬の改定に当たっては、あくまで財源を純粋に上乗せするいわゆる"真水"での対応が必要である」と主張した。
また、5月14日に行われた国民医療を守る議員の会には、国会議員137名、都道府県医師会等から117名が出席したことに触れ、日本医師会の主張を踏まえてその場で採択された決議は、「極めて重いものである」と強調。今後は、この決議をもって、同議連から「骨太の方針2025」の取りまとめに向けて政府・与党に要望を行ってもらうことになるが、日本医師会としても全力で取り組んでいくと意欲を示した。
また、5月13日の新しい資本主義実行本部で示された提言案に関しては、今後政府が取りまとめる「新しい資本主義実行計画」と「骨太の方針2025」等に一体的に反映することとなっており、「公定価格(医療・介護・保育・福祉等)の引き上げ」等が含まれることから、「より明確な表現で、確実な賃上げ・物価上昇への対応として反映されるよう、引き続き働き掛けていく」と述べた。
更に、5月13日の新しい資本主義実行本部の提言案に先立ち、12日に行われたヘルスケア・トランスフォーメーションプロジェクトチームにおいては、保険外併用療養費制度の運用改善について、有効性評価が十分でない最先端医療にも対象範囲を拡大することが提案されていることにも言及。昨年5月22日の定例記者会見で、主に将来の保険収載を前提とした「保険外併用療養費制度」と、所得や資産の多寡により受けられる医療に差をつける「混合診療」は全く異なるものであると主張したことを改めて説明。「日本医師会としては、有効性評価が十分でない最先端医療についても、安全性が評価されていることが最低限必要であると考えている」と述べた。
財政審の主張に反論
財務省財政制度等審議会で4月23日に「持続可能な社会保障制度の構築(財政各論Ⅱ)」に関して議論が行われたことについては、当日の資料の内容について、日本医師会の考え方を詳説した。
各資料での指摘に対して、①社会保障費の伸びを高齢化の伸びの範囲内に抑えるという対応は、デフレ下の遺物であり、インフレ下では、税収も保険料収入も増加することを考慮し、目安対応を抜本的に改めた文言とすべきである②現役世代の収入増に伴って現在の保険料率のままでも保険料収入は増え、社会保障はその中で十分行うことができており、現行の保険料水準でも共助の財源は増加している③診療所の経営状況については、4月23日開催の中医協で議論されているとおり、経常利益率は「最頻値」で判断する必要がある④生活習慣病管理料の算定については、医師が判断するもので、そもそも中医協で議論すべき内容であり、財政審が言及すべきではない⑤過剰サービスの評価の適正化については、「特定過剰サービス」という発想自体が到底容認できない―と反論。「財政審の多くの主張は世論に受け入れられなかった結果、昨年と同様のものが多い」ことを指摘し、日本医師会の考え方は昨年4月17日及び5月22日の定例記者会見でそれぞれ反論したとおりとして、理解を求めた。
関連資料
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