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令和7年(2025年)8月6日(水) / 「日医君」だより / プレスリリース

OTC類似薬に係る最近の状況について

 江澤和彦常任理事は8月6日の定例記者会見において、医師が処方する医療用医薬品の一部をOTC類似薬として、保険給付のあり方の見直しを進めるような動きが見受けられることに対し、国民の健康に対する大きなリスクが生じ得るとして懸念を強く表明。国民の安全性や公平性を損なわないよう、慎重な議論が必要であるとした。

 同常任理事はまず、具体的な懸念点として、(1)経済的負担の増加、(2)自己判断・自己責任での服用に伴う臨床的なリスク―を挙げた。

 (1)では、OTC類似薬が保険適用から除外された場合、国民の治療アクセスが経済的な問題で断たれるといった大きな問題が生じることを指摘。更に、長期間の治療を要する難病患者や障害者、小児医療における子育て世代の親の負担は深刻な問題であるとした他、OTC類似薬は軽症の病気から難病まで幅広く使用されている基礎的な医薬品であることに触れ、「院内や在宅医療の処方にも大きな支障を来すことから、保険適用を外すことは断固反対」と主張した。

 また、病気により保険適用のあり方を変えてはどうかとの意見に対しては、「医療用医薬品と一般用医薬品では効能や効果の表記が異なっており、単純に適応できるものではない」とした。

 (2)では、診断や治療導入の遅れ、重症化につながるリスクがあることに言及。「受診無しの服薬だけで症状が軽くなったことを治癒と勘違いしたり、服用を中途半端に繰り返したりすることで、悪化や重症化を来たすことも危惧される」と指摘した。

 また、患者の症状の原因が一般用医薬品と疑われるケースを経験した医師が2割以上に及ぶといった調査結果に触れた上で、実臨床では処方のみならず、必要な場合に適切な検査の他、食事や運動など生活習慣の指導を行いながら治療を行っているとして、「仮にOTC類似薬であっても、購入して服用するだけでは適切な治療とはならない」と述べた。更に、医師は一般用医薬品の服用状況が確認できないとして、「OTC類似薬の保険適用除外は、重複投与や相互作用の問題等、診療に大きな支障を来たす懸念がある」と強調。その他、一般用医薬品はさまざまな成分を含む配合剤が多く、副作用の原因の判断に苦慮する場合がある他、処方や調剤において限界があることにも言及した。

 他方、OTC類似薬の保険適用除外に賛成する医師の意見も少なくないとの一部報道に触れ、「調査対象に偏りが見受けられるため、調査結果については詳細な分析が必要」と指摘した。

 更に、日本医師会がこれまで社会保障については、「税金による公助」「保険料による共助」「患者の自己負担による自助」の3つのバランスを考えながら進めることや、低所得者や社会的弱者にしっかりと配慮することが重要であると主張してきたことを改めて説明。国民生活を支える基盤として、「必要かつ適切な医療は保険診療により確保する」という国民皆保険制度の理念を今後とも堅持すべきであり、国民皆保険制度において、給付範囲を縮小すべきではないという日本医師会の考えを改めて強調した他、「医療保険制度の健全な持続のため、国民医療費を抑える視点も十分理解しているが、OTC類似薬の保険給付の見直しについては、国民の健康リスクに与える影響も大きく、慎重な対応が求められる」とした。

 その他、同常任理事は「骨太の方針2025」や「三党合意」での文言は「保険給付のあり方の見直し」という記載になっていることにも言及。「保険適用除外」とは書かれていないことを改めて強調した上で、「今後の議論の出発点は、保険適用除外ではなく、給付の見直しの検討であり、国民の安全性や公平性を損なわないよう、慎重な議論が必要」と述べた。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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