専門的緩和ケアの3つの現場
緩和ケアチーム 都立駒込病院(前編)
がんの治療の早い段階から、患者さんの抱える様々なつらさの緩和にチームで関わります。
チームで専門性を発揮する
緩和ケアチームは、がんの初期から、患者さんの痛みやつらさのケアに携わることを専門とした医療チームです。患者さんから要望があった場合や、がん治療に関わる医療者からコンサルトがあった場合に、緩和ケアチームはそれを受けて患者さんの状態に合わせた専門的ケアを提供します。特にがん診療連携拠点病院においては、その指定要件の中で、緩和ケアチームを整備することが求められています。
緩和ケアチームは、身体症状の緩和を担当する医師、精神症状の緩和を担当する医師、緩和ケアの経験を有する看護師・薬剤師などのメンバーで構成されています(このメンバーは診療報酬の加算基準にも定められています)。他にも、施設によって心理士や栄養士、ソーシャルワーカー、リハビリ専門職などの多職種が関わっています。
駒込病院の緩和ケアの取り組み
緩和ケアチームの活動について、都立駒込病院の緩和ケア科部長・田中桂子先生にお話を伺いました。
「当院では緩和ケア科医師・精神科医師・看護師・薬剤師・心理士をコアメンバーとし、栄養士・ソーシャルワーカーなどの多職種が連携してチームを構成しています。院内の栄養サポートチームや褥瘡対策チームとも連携しながら、幅広い視点からの緩和ケアを推進しています。」
また駒込病院では、2014年1月のがん診療連携拠点病院の指定要件の改定を受けて、9月から患者さん全員にスクリーニングシートを配布し、心・体のつらさの自己評価を行ってもらうという取り組みを段階的に始めました。スクリーニングにより患者さんをピックアップして、つらさの段階に応じたケアを提供しているのです。
「具体的には、一次支援では病棟や外来のスタッフがパンフレットを渡したり、痛みについてヒアリングをしたりします。二次支援では緩和ケアに関する認定看護師が関わり、さらに専門的な指導を行います。栄養士や心理士、ソーシャルワーカーが関わる場合もあります。三次支援では緩和ケアチームが全面的に関わります。希望により、緩和ケア病棟に移動することもあります。患者さんの年齢や生活背景、がんの進行度、治療法などにかかわらず、全ての患者さんに必要な緩和ケアを提供することを目指しています。」
院内教育で、スタッフに緩和の視点を
取り組みを行うにあたっては、スタッフ全員が緩和の視点を持つことが必要です。
「スタッフ全員が緩和ケアについて理解し、最低限のことができるようにするため、院内での教育・啓発、マニュアルの整備に力を入れています。例えば、緩和ケア科医師・がん看護専門看護師・緩和ケア認定看護師が中心となって、各スペシャリティを持った専門・認定看護師と共に勉強会を行ったり、電子カルテ上にマニュアルを設け、いつでも緩和ケアチームに相談できるような基盤を整えたりしています。また、各病棟に緩和ケアリンクナースを配置し、困っている患者さんや看護師がいないかを常に見て回ってもらっています。
病院には医師だけでなく様々な職種の人がいます。お互いの役割をきちんと認識し、コミュニケーションをとれれば、よりよい医療が提供できると思っています。」
専門的緩和ケアの3つの現場
緩和ケアチーム 都立駒込病院(後編)
医師
緩和ケア科医長
鄭 陽先生
患者さんや家族と出会った時からコミュニケーションをしっかりとって、信頼関係を築いていくことが、緩和ケアの第一歩だと思います。
医師
研修医
川本 晃史先生
研修医2年目です。様々な科をローテーションしてきた中で、このチームが最も一緒に動いている感じがあります。ここでは先輩医師だけでなく他職種とも頻繁に顔を合わせて話すことができるので、コンサルトがしやすいですね。チームで協力して治療法を考えることができるのは、やっぱり理想的だなと思います。
看護師
がん看護専門看護師
宗定 水奈子さん
チームの看護師として病棟の看護師の後方支援を行います。患者さんと直接会う時間は限られているので、チームで情報を収集し、ポイントを絞って対応していきます。病棟と連絡を密にとり、病棟とチームとの患者さんやご家族に対する支援の考え方をすり合わせていきます。そのうえで、他の専門職の支援要請など調整を行うことも大事な仕事です。病棟の看護師が声をかけやすく、開かれたチームであるように心がけています。
心理士
心理療法士
栗原 幸江さん
時間の流れと人間関係の両方を見ながら、患者さんのお話を伺います。その中で、声の調子や選んでいる言葉、語彙もその人の内面の表れとして観察し、今直面しているつらい局面を乗り越えるための気づきをサポートしていきます。患者さんのお話の中で、治療やケアに活かせることは他職種と共有するようにしています。また、患者さんと向き合う医療者の心のケアにも携わっています。
栄養士
管理栄養士
能勢 彰子さん
患者さんにとって、食事ができるということはとても大事なことです。食事ができないことをつらく思う方はとても多いので、食欲が低下して1人分食べられない方にも、食べたいもの・食べられるものの要望を聞いて、できる範囲でお出ししています。心をこめて手作りしたゼリーやスープは好評をいただいています。
ソーシャルワーカー
高橋 利江さん
受診の案内、制度や医療費の紹介、在宅の調整など、入院から退院までの様々な相談に応えています。
薬剤師
緩和薬物療法認定薬剤師
宮澤 真帆さん
多くの患者さんが抗がん剤治療などを受けているため、チームで提案する薬との相互作用や副作用の重複に注意し、薬学的視点から考えられることをメンバーと共有します。患者さんに服薬指導を行ったり、看護師さんには薬を使用する際の注意点などの情報提供を行っています。
褥瘡対策チーム
皮膚・排泄ケア認定看護師
佐々木 尚美さん、里見 優子さん
がん治療中の患者さんは、痛みや倦怠感、吐き気といった症状でなかなか動けなくなり、褥瘡ができることが多いんです。できてしまった傷は治りにくいので、緩和ケアチームと一緒に考えながら、患者さんがつらくないような体位にしたり、傷ができるだけ悪くならないような配慮をしたりしています。
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