「食べる」×「健康」

「食べる」×「健康」を考える①(前編)

食べる・噛む機能の維持が毎日の「小さな幸せ」につながる

今回は宮城県内の医科・歯科・看護・管理栄養分野の学生たちが座談会を行いました。

食べることは、ただ単に栄養を摂るだけでなく、楽しみや生きがいにつながっています。読者の皆さんにとっては、「口から食べられる」ことは当たり前のことかもしれません。しかし、「食べる」ためには「食事を用意する」「口に運ぶ」「噛む」「飲み込む」「消化する」必要があります。特に高齢になると、様々な理由でその機能が低下してしまうことが多いため、様々な専門性を持った医療系多職種が連携し、それぞれの機能をサポートしたり、機能の低下を予防することが必要になります。

この連載では、医療系多職種の学生が、食べることや健康を支えるために、どのように関わっていけるかを考えていきます。

多職種で支えるって?

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編集部:皆さんの学部では、食事や口腔内の健康、栄養を支えるために多職種が連携することについて、どの程度学んでいますか?

石山(医学部):医師が栄養に目を向けることは大事だと思いますが、実習の印象ではチームによりけり…という感じです。

桃北(歯学部):授業の中で、医科と歯科が連携して周術期管理を行うことが大事と言われてはいます。

門脇(看護学専攻):私は実習先の病院で連携の現場を見ることができました。看護師は、毎日患者さんの食事の状況を記録するのですが、ある患者さんが食事を食べきれないことが続いていました。そこで看護師が点滴の際に「何か嫌いな食べ物はありますか?」と聞くと、「ずっと家畜の世話をしていたから、肉類はあまり食べられないんだ」と話してくれたんです。そこで、その分のカロリーを補う方法をカンファレンスで話し合い、管理栄養士にお任せしたというケースがありました。

有馬(歯学部):門脇さんの経験のように、連携って単に患者さんを紹介し合おうというだけではなくて、もっと深いものですよね。様々な職種が、「患者さんが人生をどう幸せに過ごすか」をサポートする形が理想だと思っています。食べることは、その方の小さな幸せにつながるので、それを多職種で支えたり、少しでも長く機能を保てるように働きかけることは大切だと思います。

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食べる」×「健康」

「食べる」×「健康」を考える①(後編)

「健康」を支えるって?

橋本(健康栄養学科):実習といえば、私は2歳半歯科健診を見学しました。その際に、お母さんが子どもに、水のつもりで砂糖の入ったフレーバーウォーターを与えていて、むし歯ができてしまっているケースを見ました。

鈴木(医学部):正しい知識がないことで、健康を損なってしまうことってありますよね。

中川(歯学部):歯の残存本数は、糖尿病や認知症などの様々な疾患や、食事をおいしく食べられるかどうかに関わってきます。そういうことを知ってもらったうえで、歯を維持するためのケアを実践してもらうことも大切なのかなと思います。

まずはお互いを知ることから

編集部:一方で、健診などに来るのは、健康への関心や知識がある人で、本当に介入が必要な人は足を運ばないとよく言われます。進んで不健康になりたい人はいませんから、正しい知識や歯の大切さについて発信し、より多くの人を掬い上げていく必要があるでしょう。そんななか、主に病院やクリニックで勤務することになる皆さんは、食べることや健康を多職種で支えていくために、どんなことが必要だと思いますか?

桃北(歯学部):患者さんがより良い生活を送れるよう、患者さんの希望を各職種が聞き取って、共有することが必要なのかなと思います。そして情報を共有して理解するためには、他の職種の観点がわかるような学習がもっと必要だと思います。

門脇(看護学専攻):看護師の仕事は患者さんのトータルサポートなので、治療中の疾患以外にも何か困難がないか、常に気を配っています。患者さんの治療に直接関わる医師や歯科医師にも、そういう観点を持っていただけるといいなと思います。

橋本(健康栄養学科):私も、管理栄養士にできることをもっと知ってもらいたいです。例えば私たちは、「ベッドにいる患者さんが一番食べやすい角度は?」というようなことも学んでいるんです。「それができるなら、管理栄養士さんに相談しようかな」と思ってもらえることは他にもあると思うので、そういうきっかけになる情報を提供できるような行動が大事なのかなと思いました。

中川(歯学部):今まで管理栄養士さんと接する機会がなくて、専門性を知りませんでした。様々な職種の人と話すのが第一歩だと感じました。

鈴木(医学部):「自分にはわからないから、この職種のあの人に聞いてみよう」と行動できることが大事だと思います。そのためには、カンファレンスに多職種が参加するのが当たり前の状態にしたり、その枠組みを地域にも広げられたりするといいのではないでしょうか。

市田(医学部):連携するうえで、単純に仲良くなることも重要だと思います。病院の診療科毎のチームで参加するスポーツ大会を開催して、そこに学生がお手伝いに入ったりしてもいいかもしれません。

石山(医学部):もちろん座学も大切ですが、実際の現場を見に行くような機会がもっとあれば、他の職種に対する理解が深まると思います。

有馬(歯学部):学生の多職種チームで病院見学をしたり、退院した患者さんのお宅に出向いてその後のケアについて学ぶのはどうでしょうか。反省会なども一緒に行うと、色々な視点からの学びがありそうです。また、様々なメディアで、学生の立場から一般の方・現職の方に向けて発信をすると、興味を持って聞いてもらえるかもしれませんね。

矢吹(医学部):医療に限らず、行政など幅広い分野の連携が必要だと思います。様々な業種・職種を目指す学生が集まって、医療だけでなく、色々な現場を見るのが大事なのではないかと思います。

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No.23