2014年9月3日
デング熱に関するQ&A(厚生労働省作成)
一般の方向け |
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問1 デング熱とは、どのような病気ですか? |
デングウイルスが感染しておこる急性の熱性感染症で、発熱、頭痛、筋肉痛や皮膚の発疹などが主な症状です。 |
問2 どのようにして感染するのですか? |
ウイルスに感染した患者を蚊が吸血すると、蚊の体内でウイルスが増殖し、その蚊が他者を吸血することでウイルスが感染します(蚊媒介性)。ヒトからヒトに直接感染するような病気ではありません。また、感染しても発症しないことも多くみられます。 |
問3 世界のどの地域が流行地ですか? |
熱帯や亜熱帯の全域で流行しており、東南アジア、南アジア、中南米で患者の報告が多く、その他、アフリカ、オーストラリア、南太平洋の島でも発生があります。最も日本に近い流行地は台湾です。 |
問4 日本国内での発生はありますか? |
海外の流行地で感染し帰国した症例が近年では毎年200名前後報告されています。日本国内で感染した症例は、過去60年以上報告されていませんでしたが、2013年には、ドイツ人渡航者が日本で感染したと疑われる症例が報告され、また、2014年8月、国内感染事例が1例確認されました。 |
問5 感染を媒介する蚊は日本にもいますか? |
主たる媒介蚊はネッタイシマカ(日本には常在していません)です。ただし、日本のほとんどの地域(青森県以南)でみられるヒトスジシマカも媒介できます。 |
問6 治療法はありますか? |
デングウイルスに対する特有の薬はありませんので、対症療法となります。 |
問7 罹ると重い病気ですか? |
デング熱は、体内からウイルスが消失すると症状が消失する、予後は比較的良好な感染症です。しかし、希に患者の一部に出血症状を発症することがあり、その場合は適切な治療がなされないと、致死性の病気になります。 |
問8 どのように予防すればよいですか? |
海外の流行地にでかける際は、蚊に刺されないように注意しましょう。長袖、長ズボンの着用が推奨されます。また蚊の忌避剤なども現地では利用されています。 |
問9 予防接種はありますか? |
デング熱に有効なワクチンはありません。 |
問10 海外旅行中(流行地域)に蚊に刺された場合はどこに相談すればよいですか? |
すべての蚊がデングウイルスを保有している訳ではないので、蚊にさされたことだけで過分に心配する必要はありません。
ご心配な場合は、帰国された際に、空港等の検疫所でご相談ください。また、帰国後に心配なことがある場合は、最寄りの保健所等にご相談ください。 なお、発熱などの症状がある場合には、医療機関を受診ください。 |
問11 日本国内でデング熱に感染する可能性はあるのでしょうか? |
日本にはデング熱の主たる媒介蚊のネッタイシマカは常在していませんが、媒介能力があるヒトスジシマカは日本のほとんどの地域(青森県以南)に生息しています。このことから、仮に流行地でウイルスに感染した発症期の人(日本人帰国者ないしは外国人旅行者)が国内で蚊にさされ、その蚊がたまたま他者を吸血した場合に、感染する可能性は低いながらもあり得ます。ただし、仮にそのようなことが起きたとしても、その蚊は冬を越えて生息できず、また卵を介してウイルスが次世代の蚊に伝わることも報告されたことがないため、限定された場所での一過性の感染と考えられます。
なお、ヒトスジシマカは、日中、屋外での活動性が高く、活動範囲は50~100メートル程度です。国内の活動時期は概ね5月中旬~10月下旬頃までです。 |
医療機関・検査機関の方向け |
問1 デング熱の病原体は何ですか? |
フラビウイルス科フラビウイルス属に属するデングウイルスです。 ウイルスには1~4までの4つの型がありますが、どの型によっても同様の病気がおこり、症状からは感染したウイルスの型はわかりません。 |
問2 潜伏期間はどのくらいですか? |
2~15 日(多くは3~7日)です。 |
問3 どのような症状が出ますか? |
突然の高熱で発症し、頭痛、眼(か)痛、顔面紅潮、結膜充血を伴い、発熱は2~7日間持続します(二峰性であることが多い)。初期症状に続き、全身の筋肉痛、骨関節痛、全身倦怠感を呈します。発症後3~4日後、胸部、体幹から始まる発疹が出現し、四肢、顔面に広がります。症状は1週間程度で回復します。
なお、ごくまれに一部の患者において、発熱2~7日後、血漿漏出に伴うショックと出血傾向を主な症状とする致死的病態が出現することがあります。 |
問4 検査はどのように行うのですか? |
血液所見では、発症後数日で末梢血の血小板減少、白血球減少がみられます。
診断のための検査は、血液からの病原体の検出、PCR法による病原体遺伝子の検出、ELISA法による病原体タンパクNS1の検出、IgM抗体の検出、中和試験等による抗体の検出などで、確定検査を行います。 なお、届出におけるデング出血熱の場合には、出血傾向、血小板減少、血管透過性亢進による血漿漏出も含めて、上記の確定検査をともに行います。 |
問5 鑑別を要する疾患は何ですか? |
発疹を有するウイルス性疾患(麻しん、風しん、チクングニア、エンテロウイルス感染症)、チフス、マラリア、猩紅熱、A型肝炎、レプトスピラ症などとの鑑別が必要です。デング熱でも時に呼吸器症状が見られることがあり、呼吸器感染症との鑑別も必要になることがあります。 |
問6 治療法はありますか? |
対症療法となります。痛みと発熱に対してのアスピリンの投与は、出血傾向増悪やライ症候群発症の可能性があるので禁忌です。血漿漏出などの症状が出現した場合は、血漿漏出による循環血液量の減少を輸液により補うことが治療の中心になります。 |
問7 患者の経過と予後はどうでしょうか? |
デング熱の予後は比較的良好です。血漿漏出と出血傾向が主症状の場合は適切な治療がなされないと致死性が高いですが、症状が回復し始めると迅速に回復するのが特徴です。 |
問8 確定患者の管理はどのように行えばよいでしょうか? |
本病は、蚊を介しないヒトからヒトへの直接的な感染はありません。ただし、発熱中の患者が蚊に刺されることがないように指導することは必要です。(日本にいるヒトスジシマカでもウイルス血症期の患者を吸血すれば他者にウイルスを伝播する可能性があります)。 |
問9 感染症法上の取り扱いはどうなっていますか? |
4類感染症に指定されており、医師が患者を診断した場合は、最寄りの保健所に直ちに届出が必要です。 |
問10 ヒトスジシマカについて教えてください。 |
ヒトスジシマカは、日本のほとんどの地域(青森県以南)に分布しています。その活動時期は5月中旬~10月下旬です。ヒトスジシマカの幼虫は、例えば、ベランダにある植木鉢の受け皿や空き缶・ペットボトルに溜まった水、放置されたブルーシートや古タイヤに溜まった水などによく発生します。人がよく刺されるのは、墓地、竹林の周辺、茂みのある公園や庭の木陰などとされています。
(参考) 国立感染症研究所昆虫医科学部ホームページ ヒトスジシマカの写真 |
問11 ヒトスジシマカの体内でデングウイルスは増えますか? |
ヒトスジシマカの体内でウイルスは増え、デング熱流行を起こす能力がありますが、ネッタイシマカに比べるとその増殖は低いとされています。 |
問12 ヒトスジシマカは越冬しますか? |
ヒトスジシマカは卵で越冬します(卵越冬)。なお、その卵を通じてデングウイルスが次世代の蚊に伝播した報告は国内外でありません。 |
問13 ネッタイシマカの特徴等について教えてください。 |
現在、ネッタイシマカは国内には生息していません。かつては国内でも沖縄や小笠原諸島に生息し、熊本県牛深町には1944~1947 年に一時的に生息していたことが記録されていますが、1955 年以降は国内から消滅したとされています。ただ今日では、航空機によって国内に運ばれる例も確認されており、定着の可能性は皆無ではありません。
なお、ネッタイシマカとヒトスジシマカが同所的に分布しているような熱帯・亜熱帯地域においては、ネッタイシマカのウイルス媒介能はヒトスジシマカよりも高いとされています(ネッタイシマカからのウイルスの検出率が高く、ヒトを吸血対象とする依存性が圧倒的に強いことがその理由です)。 (参考) 国立感染症研究所昆虫医科学部ホームページ ネッタイシマカの写真 |
問14 ネッタイシマカは国内に定着できますか? |
ネッタイシマカの分布の北限は台湾の台中市周辺とされています。従って、国内では沖縄県の南方(石垣島・西表島など)以北の野外では定着できないと考えられます。しかし、空港ターミナルなど、一定の温度が維持されているような特別な場所では定着できるかもしれません。
なお、ネッタイシマカにおいて、デングウイルスの経卵巣伝搬の可能性を示唆した報告はありますが(インドの乾季に捕集されたオス蚊や幼虫からウイルス遺伝子が検出された例)、その割合は非常に低く、次の流行を引き起こすことは極めて難しいと結論されています。 |
問15 蚊に刺されないようにするにはどうしたらよいでしょうか? |
ヒトスジシマカやネッタイシマカは日中に活動し、ヤブや木陰などでよく刺されます。その時間帯に屋外で活動する場合は、長袖・長ズボンの着用に留意し、忌避剤の使用も推奨します。 |
問16 日本でデング熱に感染する可能性はありますか? |
日本に生息するヒトスジシマカもデングウイルスを媒介することができますので、流行地で感染した人が帰国し、蚊に吸血されることにより、その蚊が周囲の方にウイルスを伝播する可能性は低いながらもあり得ます。なお、血液中にウイルスが確認される期間は、発症日の前日から発症5日後までとされています。帰国者(患者)の周囲の方でデング熱を疑うような症状があれば、渡航歴の有無にかかわらず検査を行うことも、場合によっては必要です。 |