「平成28年度地域包括診療加算・地域包括診療料に係るかかりつけ医研修会」が8月21日、日医会館大講堂で開催された。テレビ会議システムによる受講者を含めて、全国から6500名を超える医師の事前の受講登録があり、当日は日医会館で254名が受講した。
本研修会は、「地域包括診療加算」及び「地域包括診療料」の診療報酬上の施設基準にある「慢性疾患の指導に係る適切な研修」の必須要件を網羅した内容となっており、本研修会の全講義受講者には、後日、日医より「修了証書」が交付されることになっている。
松本純一常任理事の司会で開会。あいさつで横倉義武会長(中川俊男副会長代読)は、国民の健康寿命を世界トップクラスにまで押し上げたわが国の医療システムを世界モデルにまで高めていくためには、国民皆保険を堅持した上で、「かかりつけ医」を中心としたまちづくりを進めていくことが重要になると強調。
その上で、「本日の研修会が、かかりつけ医機能の充実に資するものとなるだけでなく、先生方が地域におけるまちづくりのリーダーとして、地域包括ケアシステムの構築に取り組むための参考となることを願っている」として、研修会の成果に期待を寄せた。
引き続き、九つの講義が行われた。
「脂質異常症」では、江草玄士医療法人江草玄士クリニック院長が、「治療の基本は生活習慣の管理である」とするとともに、診療レベルアップのための方策として、頸動脈エコーの活用等について説明した。
「糖尿病」では、菅原正弘医療法人社団弘健会菅原医院長が、今後の治療に当たっては、より包括的なテーラーメイド治療の実践と共に、コメディカルや専門医、他科との連携が必要になるとした。
「高血圧症」では、有田幹雄和歌山県立医科大学名誉教授が、高血圧の治療に当たっては患者個々の病態をよく考え治療することが重要になるとするとともに、その予防策として、減塩、運動が大事になると指摘。
「認知症」では、瀬戸裕司医療法人ゆう心と体のクリニック院長が、最新の診断基準、特徴的な症状等を紹介した上で、「進行を遅らせるためには早期の介入、進行度に応じた対応をとることが求められる」と述べた。
「禁煙指導」では、羽鳥裕常任理事が、喫煙の害を説明するとともに、最近のトピックスとして、電子タバコや東京オリンピックを控えた受動喫煙法規制等の動きを紹介。今後も日医として、禁煙活動の推進を図っていく考えを示した。
「健康相談」では、新田國夫社団つくし会理事長が、キュアからケアへの継続性のある医療が求められるようになる中で新たな健康概念の確立が求められるとした他、高齢者の健康と栄養状態の関係について解説し、健康長寿を維持するためにも、より早期からのサルコぺニア予防・フレイル予防に取り組む必要性を指摘した。
「在宅医療」では、太田秀樹医療法人アスムス理事長が、在宅医療の現状を概説。その普及のカギは地域のかかりつけ医にあるとして、積極的な関与を要請した。
「介護保険」では、池端幸彦医療法人池慶会池端病院理事長/院長が、主治医意見書の書き方等を解説するとともに、かかりつけ医として地域包括ケアシステム推進のために必要な心得10ケ条(「生活の質・尊厳ある人生に視点を置く」等)を紹介し、その実践を求めた。
「服薬管理」では、白髭豊医療法人白髭内科医院長が、ポリファーマシー(多剤併用)や残薬の問題点等を解説。より良い服薬管理のためには、薬剤師など多職種との連携が求められるとした。
最後に総括を行った中川副会長は、昨今、国民皆保険を揺るがすような高額医薬品が販売されていることに言及。「日医としては、厚生労働省の審議会を通じて、薬価算定の抜本的な見直しを図っているところである」として、理解を求めるとともに、受講者に対しては冷静沈着な対応を求めた。
なお、同研修会の内容は、後日、日医ホームページにて映像を配信する予定となっている。