横倉義武会長は4月6日、日本記者クラブの会議室で開催した平成29年度第1回日本医師会定例記者懇話会において、「『かかりつけ医』と『同時改定』」をテーマに講演を行った。
「かかりつけ医」の提唱から現在に至るまで
横倉会長は、まず「かかりつけ医」について、歴史的経緯を踏まえ解説。1992年に村瀬敏郎日医会長(当時)が「医療の基本は『かかりつけ医』でなくてはならない」として提唱し、2013年には『医療提供体制のあり方』(日医・四病院団体協議会合同提言)において定義された。また、かかりつけ医は医療的機能のみならず、社会的機能も有することを明確にしたことなどを説明した。
更に、横倉会長は、かかりつけ医と総合診療専門医の関係についても言及。かかりつけ医は「日本の医療提供体制の土台を支える最も重要な役割」であり、総合診療専門医は「あくまでも学問的な見地からの評価によるもの」であると述べた。
一方、日医も参画して意見が反映された社会保障制度改革国民会議の報告書では、「フリーアクセスを守るためには、緩やかなゲートキーパー機能を備えた『かかりつけ医』の普及は必須」という表現で取りまとめられたことを紹介。その後、平成26年度診療報酬改定ではかかりつけ医の評価が新設されたとした。
その上で横倉会長は、これらの動きは、外来の機能分化が国民にとって必須であるという認識からくるものであるとし、「専門的な診療を提供する大病院へは、かかりつけ医を経由して受診した方が患者のためになるのではないか」と述べた。
その他、日医として、かかりつけ医機能を充実するために研修会を行っていることや、介護サービスとの連携を通じた認知症対策を推進していることなども紹介した。
「平成30年度診療報酬・介護報酬同時改定」への対応について
「平成30年度診療報酬・介護報酬同時改定」への対応については、「経済の発展」と「財政の健全化」の両立が求められる中、「国民の不安が高まる時こそ、社会保障を充実することで、将来の安心が社会を安定させ、経済成長につながっていく」とするとともに、持続可能な社会保障のためにも、医療者側がコスト意識を持つことも重要になるとした。
「診療報酬・介護報酬同時改定に向けての財源確保策」としては、①「1億総活躍」「地方創生」「働き方改革」等におけるアベノミクスの果実の活用②応能負担の推進③医薬品・医療機器のイノベーションに対する税制や補助金の活用―等を挙げ、それぞれについて解説を行った。
①では、「現在、医療機関には300万人以上が従事しており、特に地方においては経済の活性化に多大な貢献をしている」と述べた上で、医療従事者への手当ては経済成長やローカルアベノミクスの推進につながると指摘。
加えて、「企業の内部留保(377・9兆円)を給与に還元すること等によって賃金が上昇し、需要創出・雇用拡大が促され、『経済の好循環』が実現する」と述べ、そこでの税収増により社会保障を充実させることで、国民不安の解消につなげていくことを提案した。
②では、「日医では以前から社会保障の理念に基づき所得や金融資産の多寡に応じた応能負担を行うべきであると主張してきた」と述べた上で、保険料率の低い国家公務員(8・3%)を始め、被用者保険の保険料率を協会けんぽの保険料率10%に合わせて公平化するなど、応能負担を推進し、財源確保に努めるべきとした。
③では、イノベーションの推進のため、医薬品・医療機器産業に税制や国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の補助金を活用することを提案。新薬創出・適応外薬解消等促進加算額について、公的医療保険の診療報酬の加算を原資に使うことなく、イノベーションの恩恵を社会全体に広く還元し、日本発の新薬を国際展開するべきであるとした。
また、「医療機器は、大幅な輸入超過により国富が流出していることから、質の良い国産製品の開発製造によって価格も低下する」と述べた。
その他にも、横倉会長は、「自治体病院の病床数減少分等の補助金の活用」や「たばこ税の増税等」もその方策として考えられるとして、その概要を説明した。