平成30年(2018年)1月5日(金) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース
第XV次生命倫理懇談会 答申「超高齢社会と終末期医療」まとまる
松原謙二副会長
日医定例記者会見 平成29年12月6日
松原謙二副会長は、第XV次生命倫理懇談会が、会長諮問「超高齢社会と終末期医療」を受けて取りまとめた答申を、昨年11月28日に髙久史麿座長(前日本医学会長)から、横倉義武会長に提出したことを報告するとともに、その概要を説明した。
答申は、(1)はじめに、(2)超高齢社会における終末期医療の現状と課題、(3)本人の意思決定とその支援、(4)終末期医療におけるケアの質、(5)おわりに―で構成されている。
(2)では、これまで4期にわたり同懇談会で検討してきた終末期医療に関する論点を、「従来の延命至上主義からの脱却」「医療・ケアチーム、家族等の関係者の合意を目指す努力とプロセスの重要性」など4点にまとめた上で、わが国の社会の現状として、老老介護と呼ばれる現象や独居高齢者の増加、認知症の問題などを指摘するとともに、今後の課題として、①患者の意思決定による終末期の生き方と平穏な死を実現するための意思決定支援の仕組みをどのように工夫するか②終末期医療の質の向上を図るためにはどのような取り組みが必要か。その場合の質の向上とは何か―の2点を提示した。
(3)では、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の重要性や、意思決定支援において、かかりつけ医が担うべき役割の大きさが指摘されている。特に「高齢者の意思決定支援」については、①独居生活者の意思決定支援②在宅での意思決定支援③成年後見制度とその問題点―の3項目を取り上げ、①では、ケア提供者がそれぞれの人生や価値観について、できる限り情報収集をすることが必須であり、一定の意思決定能力があるうちに何らかの意思決定支援の仕組みに取り込む必要がある、②では、在宅医療に医師が関与する中で、医師や訪問看護師、介護職など他職種の関係者が連携し、その中で家族も含めてACPを繰り返し行い、本人の意思決定支援を行うことが重要である、③については、成年後見人には医療的判断をする権限がないとされている他、任意後見契約を結んでいる場合を除いて、裁判所によって成年後見人が任命されることから、意思決定支援の方策ではないとして、成年後見制度に頼る必要性を少なくするような意思決定支援、ACPのプランニングが重要である―ことなどが述べられている。
(4)では、「本人の意思に反するケアは質の良いケアと言えない」という基本を確認した上で、本人の意思に基づき、かつ本人の人生にとって最善となるケアを実現することの重要性を指摘。また、緩和ケアについては、終末期であるか否かを問わず、疾患の全時期を通じて早期から必要に応じてなされるべきであり、疾患への対応とQOLをターゲットとするケアを併せて行うこと等を通じて、尊厳ある死(あるいは尊厳ある生)を実現することが重要としている。
会見に同席した髙久座長は、本答申の取りまとめについて、「高齢者、特に独居の場合に、どのようにして本人の意思を確認するか、また、家族と本人の意見が違う場合にどのように対応するか等が問題となった。議論を重ねた結果、本人の意思を最大限に尊重するべきであるとの結論に至った」と説明した。
横倉会長は、答申を受けて、「かかりつけ医の先生方に、終末期医療に対する意識をより一層高めて欲しいと考えている」とした上で、「日医かかりつけ医機能研修制度の更なる充実と活用を図る中で、ACPやリビングウィルの意義、地域で看取りを行うための技術力やコミュニケーション能力を高めるための内容などを盛り込み、患者の"尊厳ある死"あるいは"尊厳ある生"に寄り添い、患者・家族が穏やかな人生の終末を過ごせるような環境整備を行っていきたい」とした。
また、「こうした問題に関しては、医療・ケアの受け手でもある、住民の理解、住民への啓発も重要である。そのため、住民あるいは医療関係者の意識啓発を目的としたパンフレットを作成し、全ての医師会員に周知・徹底を図るとともに、各種講習会・研修会等での活用を通じて、医療者側と住民とが話し合いのきっかけを持つための一助となることを期待する」と述べた。
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