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平成30年(2018年)9月20日(木) / 日医ニュース

かかりつけ医機能の拡充を目指して

かかりつけ医機能の拡充を目指して

かかりつけ医機能の拡充を目指して

 「平成30年度地域包括診療加算・地域包括診療料に係るかかりつけ医研修会」が8月26日、日医会館大講堂で開催された。
 本研修会は、平成26年度診療報酬改定において新設された「地域包括診療加算」及び「地域包括診療料」の施設基準にある「慢性疾患の指導に係る適切な研修」の一部に当たる研修会として位置づけられており、かかりつけ医機能における医療的機能を中心として各疾患に関するエビデンスに基づく最新の知見を学習できる内容で、全講義の受講者には、後日、日医より「修了証書」が交付される。
 江澤和彦常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで横倉義武会長(今村聡副会長代読)は、地域医療における日頃の尽力に謝意を表すとともに、「かかりつけ医には、住民が住み慣れた地域で自分らしい生活を継続していく地域包括ケアシステムの要としての役割が期待されている」と強調。人生100年時代を迎える中、健康寿命の更なる延伸のためにも、かかりつけ医が疾病予防や健康づくりに積極的に関与していくことが必要であるとした。
 また、自然災害の被災地において、要配慮者の生命・健康を守るための地域包括ケアによるまちづくりや、G20、オリンピック・パラリンピックなど国際的なイベントの開催に備えた危機管理体制構築の重要性に触れ、医学・医療への期待が生命と健康の保持増進から、生活問題全般へと広がりつつあることを指摘。「医師は人を支援することの本来的な意義に立ち返り、その能力を広く患者や社会に還元していくことが求められている。今後も日医として、地域住民とのつながりを大切にしながら、かかりつけ医機能の拡充を図り、継続的で包括的な保健・医療・福祉の実践を目指した地域医療を確立することで、医療に対する国民の信頼に応え続けたい」と述べた。
 午前は、江澤常任理事が座長となり、(1)糖尿病、(2)認知症について、午後は城守国斗常任理事が、(3)脂質異常症、(4)高血圧症、(5)禁煙指導について、松本吉郎常任理事が、(6)健康相談、(7)在宅医療、(8)介護保険、(9)服薬管理について、それぞれ座長を務め、計9題の講義が行われた。
 (1)糖尿病では、菅原正弘医療法人社団弘健会菅原医院長が、2型糖尿病においては発症の10年前から血糖値が上がり始めるものの、インスリンをつくる膵臓が疲弊するまでは空腹時血糖値が低い状態に保たれ、健診では見つかりにくいことを強調。病歴聴取に当たっては、糖尿病が通常は無症状であることに留意し、過去の最大体重や生活環境まで丁寧に聞く必要があるとした。
 (2)認知症では、瀬戸裕司医療法人ゆう心と体のクリニック院長が、認知症の診断基準を説明。記憶障害がゆっくり進行する認知症に対し、発症が急性なものはうつ病が疑われるとした他、認知症患者への接し方や意思決定支援のあり方について解説した。
 (3)脂質異常症では、江草玄士江草玄士クリニック院長が、『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版』を基にして、脂質異常症の診断基準の注意点や生活習慣改善策のポイント、治療薬の有効性・安全性について説明した。
 (4)高血圧症では、有田幹雄医療法人スミヤ角谷リハビリテーション病院長が、血圧が適正にコントロールされている患者は約25%に過ぎないことを指摘。かかりつけ医として家庭血圧の有用性を伝え、測定を促すとともに、降圧薬服用開始後も生活習慣の改善に介入すべきであるとした。
 (5)禁煙指導では、羽鳥裕常任理事が禁煙指導においては、喫煙そのものが"病気"であるとの認識で取り組むべきであるとした上で、ニコチン依存症の概要や健康への影響を概説。日医が昨年5月に行った「受動喫煙の防止対策を強化・実現するための署名活動」への協力に感謝を述べるとともに、禁煙治療は診療科を問わず実施が可能であるとして、積極的な取り組みを求めた。
 (6)健康相談では、新田國夫医療法人社団つくし会理事長が、健康相談を可能にする環境づくりとして、貧困やそれに伴ううつなどの心理社会的な困難を抱える人達を見出し、非医学的な問題についても相談に乗り、自己肯定感を高める支援が肝要であるとした。
 (7)在宅医療では、太田秀樹医療法人アスムス理事長が、地域包括ケア時代の在宅医療の状況を解説するとともに、医療的ケア児の増加が新たな課題となっていると指摘。24時間在宅医学管理の負担は、24時間対応の訪問看護ステーション等との連携によって軽減されるとして、積極的な参画を呼び掛けた。
 (8)介護保険では、池端幸彦医療法人池慶会池端病院理事長/院長が、介護保険制度の現状と課題について概説した上で、本人の意思や選択を受け止め、生活の質や尊厳ある人生という視点からも、医療提供のあり方を多職種協働で考えていくことが求められるとした。
 (9)服薬管理では、白髭豊医療法人白髭内科医院長が、服薬アドヒアランスが低下する要因として、認知機能の低下、難聴、視力低下等を挙げ、服薬管理については薬剤師、医師、看護師、栄養士など多職種連携が不可欠であることを強調。また、病院内と地域(診療所、在宅、施設)それぞれの服薬管理の橋渡しを包括的に考える必要もあるとした。
 閉会のあいさつに立った今村副会長は、政府の議論の場において、かかりつけ医以外を受診した場合に定額負担を求めるという考えが根強く残っていることに触れ、「かかりつけ医を制度化して国民に強制的にもたせるような対応は、これまで築き上げてきた患者さんとの信頼関係を壊すことになりかねず、根気強く、その都度打ち消していく必要がある。国民自らがかかりつけ医をもてるよう、かかりつけ医機能を強化することにより、普及していきたい」と強調。参加者が本研修内容を踏まえ、かかりつけ医として、日々の診療と地域包括ケアシステムの構築に取り組むことに期待を寄せた。
 なお、当日は日医会館で272名が受講した他、テレビ会議システムの受講について46都道府県医師会から約7600名の事前申し込みがあった。
 同研修会は、後日、日医ホームページにて映像を配信する予定となっている。

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