令和4・5年度会内委員会答申・報告書(全文は日本医師会ホームページ「メンバーズルーム」に掲載)
病院委員会はこのほど、松本吉郎会長からの諮問「第8次医療計画で求められる医師会の役割」に対する「審議報告」を取りまとめ、松田晋哉委員長(産業医科大学医学部教授)から松本会長に提出した。
審議報告は、(1)高齢者救急への対応力の強化、(2)医療施設間の適切な機能分化と連携に対する助言機能の強化、(3)高齢化への対応力の強化、(4)健康危機管理体制確立のための中心的役割、(5)情報化への積極的なかかわり―で構成されている。
(1)では、高齢化の進行や働き方改革等の影響により、多くの地域で高齢者救急に対応しきれない可能性があるとし、その解決策として函館市で医師会が主体となって構築している、ICTを活用した情報共有の仕組みを紹介。加えて、今後については、トリアージを含めて一次救急の役割強化が不可欠であるとしている。
(2)では、病院機能の転換に当たって首長や議会、住民、病院関係者との調整に非常に苦労したという北海道の事例を紹介。こうした問題を解決するためには、現場をよく理解している地域の医師会員からの助言が有効になるとしている。
また、日本医師会が提供している地域医療情報システム(JMAP)や日医総研の役割の重要性にも触れている。
(3)では、地域における包括的・継続的ケアの実施を可能とするためには地域のかかりつけ医の役割が重要になると指摘。また、専門医制度においても一定期間、地方の医療機関で多様な傷病をもつ患者の診療に当たることについて、各専門医の研修課程の中で積極的に評価する仕組みが望ましいとしている。
(4)では、新型コロナウイルス感染症の際の知見を集約し、実効性のある健康危機管理体制の構築を、医師会として具体的に提案すべきと主張。また、健康危機への対応に当たっては、平時から余裕のある人材、資材、病床を確保しておくことが不可欠とし、その準備については「診療報酬ではなく、国土強靭(きょうじん)化を目的とした省庁横断的な補助金で行うことが妥当」としている他、「地域から医療機関が無くなることも健康危機であるという認識が必要である」と指摘している。
(5)では、国レベルでは、医療及び介護の情報基盤の構築に向けた議論が活発化しているが、情報の二次利用に偏った提言が行われがちであるため、現場の実務者の視点を基に構築することが必要であり、日本医師会からの積極的な提言が求められるとしている。