未来志向で命を守る 災害医療の新たな挑戦~医師から起業家まで、オールジャパンで「知」を結集~

1. シンポジウム開催の背景

日本医師会は、2024年6月、「次世代の災害医療」と題したシンポジウムを東京で開催した。日本医師会は、今年7月に流通し始めた、新紙幣の肖像の一人である「日本近代医学の父」北里柴三郎博士らによって設立された。破傷風菌の純粋培養など、国内外における感染症予防と細菌学の発展に貢献した北里博士は、「病気を未然に防ぐことが医者の使命」という信条を貫き、予防医学の重要性を提唱し続けた。

自然災害やテロ発生など、大量の傷病者が発生し得る状況下で行う災害医療においても、災害前の予知・準備の必要に迫られている。それは、気候変動により自然災害が甚大化・頻発化し、首都直下地震や南海トラフ地震などの大型地震も懸念されているからだ。特に南海トラフ地震は、今後30年の間に70~80%の確率で発生し、死者数が最大32万人にも上ると推定されている。大きな災害リスクを抱える日本では、災害医療への取り組みが喫緊の課題となっている。

多くの死傷者の救命の最前線に立ってきた医師たち。「救えたはずの命を、一人でも多く救いたい」という真摯なこの医師たちの想いが、このシンポジウム企画を突き動かした。

日本医師会の松本吉郎会長は、本シンポジウムの挨拶で強いメッセージを打ち出した。「災害医療は命に直結します。医療が他分野と協力・連携し、『オールジャパン体制』でアプローチすることが重要です」。

シンポジウム1

今回のシンポジウムは、医療関係者に加え、気象・土木の専門家、ベンチャー企業のリーダーが、各分野の「知」を共有した、日本医師会初の試みとなった。

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