未来志向で命を守る 災害医療の新たな挑戦~医師から起業家まで、オールジャパンで「知」を結集~

6. 東京―海抜ゼロという地形がもたらすリスク

リバーフロント研究所の⼟屋信⾏⽒(⼯学博⼠)は、東京都職員としてまちづくり・河川事業の豊富な経験を持つ、⽔害対策の専⾨家である。

⼟屋⽒は、「もし東京湾で⾼潮が起きれば、都内の188病院、3,449診療所が⽔没するだろう」と予測。これは都内にある病院の59%、診療所の49%に相当する数値だ。「東京では地下⽔を⼯業⽤⽔に使った結果、地盤沈下が起きており、⼲潮時にゼロメートル、ないしは海⽔⾯以下の⼟地が多い。もし⾼潮が起きれば、東京全体の病院における病床数の66%に影響が及ぶ可能性があるのです」。

シンポジウム1

⼟屋⽒はまた過去に、東京での多摩川氾濫を予測して避難勧告を出したときの経験を振り返った。

「当時、避難したのは、1,800⼈中、たったの6 ⼈。2018年の⻄⽇本豪⾬でも、平均4.6%だけ。つまり95%の⼈は逃げてくれないのです。⼈々に危機意識がないことが、災害犠牲者を増加させている最⼤要因です。気象庁・国⼟交通省・医師会がいくら頑張っても、災害ゼロは実現できません。この意識改⾰が本当に必要です」。

⼀⽅、佐賀豪⾬の発⽣時、全く動じることなく医療⾏為を継続できた順天堂病院の事例も紹介。同病院はハザードマップの浸⽔予測に合わせて、浸⽔しても1階が⽔没しないレベルにまで地盤を上げていた。

⼟屋⽒は、「ハザードマップを活⽤すれば、あらゆる⽔害が起きても犠牲者をゼロにできる可能性がある」と情報活⽤の重要性を指摘。「病院向けのBCP を作成するためにも、⼟⽊・建築・機械・電気、そして⾏政のスタッフが⼀丸となって協働することが重要です」。

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