大学における男女共同参画
男女共同参画委員会から
川上 順子(日本医師会男女共同参画委員会委員)
はじめに~男女共同参画とは?~
男女共同参画という言葉は定着しましたが、学生のみなさんはその意味や活動について具体的にイメージできるでしょうか。
男女共同参画社会とは、男女が対等に、政治的・経済的・社会的・文化的といったあらゆる分野で活躍できる社会のことです。そして、男女がともに責任を担う社会でもあります。右下の図1のように、基本理念として「男女の人権の尊重」「社会における制度又は慣行についての配慮」「政策等の立案及び決定への共同参画」「家庭生活における活動と他の活動の両立」「国際的協調」の5本の柱が掲げられています。
医学生のみなさんが今後、教員や研究者となって在籍するかもしれない医科大学においても、このことに関する様々な活動が行われています。それでは、大学における男女共同参画について具体的に見ていきましょう。
大学での活動の現状
近年では、多くの大学に男女共同参画部門が設置されていて、女性医師や研究者の支援をしています。
女性医師や研究者の支援には2つの方向があります。ひとつは「キャリア形成支援」、もうひとつは「セーフティーネットとしての支援」です。前者は、意欲のある女性がキャリアを積むための支援であり、後者は女性が様々な困難に直面した時に仕事を続けられるための支援であると言い換えることもできます。
現状では、後者に重きを置いている大学が多く、特に保育支援や短時間常勤勤務体制の整備など、勤務体制に関わる支援に力を入れている場合がほとんどです。またその活動は、学生を対象としたものよりも、教職員を対象としたものが多くなっています。
『2020年30%』へ向けて大学の動き
男女共同参画基本法に基づく「第3次男女共同参画基本計画」では、具体的な数値目標やスケジュールを設定し、達成状況について定期的にフォローアップすることが求められています。特に医科大学に大きく関連するのが、女性が指導的地位に占める割合を2020年までに30%程度にすることを求めた『2020年30%』の目標に向けたアクションプランの推進です。
内閣府の平成22年の調査結果(図2)では、女性研究者の割合は13.6%となっており、平成4年の7.6%と比較すると2倍近くに増加しています。特に、男女共同参画基本法制定後の10年間の女性研究者数の伸びは大きく(文献1)、それに比例して教授への昇進も増加しています。しかし、大学・大学院において教員に占める女性の割合を見ると、准教授以上の役職は平成22年度では20%以下となっており、まだまだ低いのが現状です(図3)。
中でも特に医学部は、女性スタッフの割合が極めて低いと言えます。平成21年の調査によれば、講師以上の役職に占める女性の割合は5%程度でした(文献2)。このことから、指導的立場の女性研究者や医師を増やすことが医科大学の課題だと言えるでしょう。この課題を解決するためには、「セーフティーネットとしての支援」に重きを置くだけではなく、「キャリア形成支援」にも力を入れていく必要があります。リーダーを育成するための支援が求められているのです。
男子学生も無関係ではない
最後にお伝えしておきたいことがあります。男女共同参画の活動は、女性だけの話ではなく、男女がともに携わってこそ意味があるのだということです。ここまで、大学における男女共同参画の活動を見てきましたが、基本的に女性に対する支援となっており、男性への働きかけが欠けているように感じます。
大学によっては、男女共同参画社会についての講義を行っているところもあります。今後もこのような試みが増え、男女がともにお互いの力を発揮できる時代が来ることを期待しています。
文献2:http://www.gender.go.jp/research/pdf/senmonsyoku/26_ch6-2-1.pdf 医療分野への女性参画促進について
図1出典:内閣府男女共同参画局 http://www.gender.go.jp/pamphlet/pamphlet-main/pdf/2011_01.pdf
図2出典:内閣府調査 http://www.gender.go.jp/research/ratio/singi240118_houdou.pdf
図3出典:文部科学省学校基本調査(平成22年度) http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
(生理学)
1974年 東京女子医科大学医学部卒業
東京女子医科大学 男女共同参画推進局
女性医師再教育センター長
日本医師会男女共同参画委員会委員
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