大学紹介

東北医科薬科大学

【教育】東北の地域医療を支える医学部

東北医科薬科大学 副医学部長 医学教育推進センター長 大野 勲

先生

本学医学部は、「東日本大震災からの復興」という要請を踏まえ、『東北地方の地域医療を支える』ことを使命として、2016年4月に開設されました。定員100名で、55名が東北6県の修学資金枠となっています。地域医療に強い志を持った学生が広く全国から集い、現在、1年次と2年次学生が学んでいます。この使命達成のために、学修成果[アウトカム]を、1.高い倫理観と責任感を持ち、多職種連携のもと、患者中心の医療を実践できる。2.幅広い医学的知識・技能を持ち、生涯にわたり自己研鑚できる。3.へき地・被災地の特色を踏まえた包括的な医療を実践でき、地域社会の発展に貢献することができる。と設定しました。そして、アウトカムの具体的な8つの能力[コンピテンシー];①倫理観と社会的使命、②人間関係の構築、③チーム医療の実践、④医学および関連領域の基本的知識、⑤診療の実践、⑥社会制度の活用と予防医学の実践、⑦科学的探究と生涯学習、⑧地域における医療とヘルスケア、を卒業時までに獲得できるよう、低学年から科目ごとのコンピテンシー達成レベルを明確にしたカリキュラムを策定しています。地域医療教育では、都市部の大学病院では学ぶ機会の少ない全人的な視点、すなわち生活者の視点(生活環境、風土、価値観に基づく医療ニーズ)を理解したうえで、総合診療力を修得する独特なカリキュラムとして、6年間を通じて東北6県の同じ地域を繰り返し訪問する滞在型学習科目(<1年次>歴史・文化の訪問学習、<2~3年次>病院・診療所・介護施設・在宅医療の体験学習、<5~6年次>総合診療および地域包括医療の臨床実習)を設けました。地域の特性や医療ニーズを直に感じ取ることにより、地域への愛着心および医療を通じて地域社会の発展に貢献するという使命感を持った医師の育成を目指しています。

【研究】「医薬連携」を軸とした研究展開

東北医科薬科大学医学部 病理学教室 教授 中村 保宏

先生

本学は、1939年に東北薬学専門学校として開学し、その後東北薬科大学を経て、2016年に日本で37年ぶりとなる医学部が本学に新設されたことで現名となりました。現在、本学は福室キャンパスの医学部(医学科)と小松島キャンパスの薬学部(薬学科・生命薬科学科)の両学部で構成されています。そのため、本学での研究はこれまで薬学部を中心に行われてきました。例えば、小松島キャンパスには超伝導核磁気共鳴装置(NMR)、単結晶自動強力X線構造解析装置などの薬学研究と関係の深い機器が備わっています。また、学内の研究機関として「分子生体膜研究所」が設立されており、「細胞膜の糖鎖生物学」を主な研究テーマとして、がんや生活習慣病など様々な病気の新しい診断・治療方法の開発を目指しています。更に、「創薬研究センター」では2015年度からの5年間文部科学省の助成によりアンメット・メディカル・ニーズ(いまだ有効な治療薬/治療法のない医療ニーズのこと)の高い「がん・老年性神経系疾患・難治性疼痛」の3領域に対する創薬基盤研究を実施しています。一方、昨年より本学には基礎・臨床医学を問わず様々な領域の医学研究者が教員として加わりました。現在、福室キャンパスには最新の研究機器を設置した共通機器室、小動物を対象とした動物実験室などが整備され、本学での医学研究も本格化しつつあります。また、同じ学部の教室間のみでなく両学部間での共同研究を積極的に推進するため「全学研究推進委員会」が立ち上がり、両学部の各教室の研究紹介を行う「医薬研究交流会」が定期的に開催されるなど、教室間・学部間の垣根を越えた共同研究が始まりつつあります。今後、これまでの各教室が保有する研究知識や経験とともに、医学部側からの臨床検体提供、薬学部での創薬技術の活用などを併せた新たな「医薬連携」の発展が大いに期待されています。

【学生生活】多彩な実習を通じ、東北に根付いた医療を学ぶ

東北医科薬科大学 

医学部 医学科 2年 菊地 美佳
同 2年 佐藤 和久/同 2年 矢吹 理人

菊地:私たちは、東北医科薬科大学医学部に一期生として入学しました。先輩のいない環境に少し不安もありましたが、かえって上下関係などを気にせず、自由に新しい環境を作っていけるのではないかという思いの方が強くありました。

佐藤:部活動は薬学部と合同で活動しています。医学部から有志で新しい部活を立ち上げることもあります。僕は今、ハンドボール部立ち上げの手伝いをしています。

矢吹:東北医科薬科大学の特色としては、地域での多彩な実習が挙げられると思います。例えば、2年生から6年生まで、毎年同じメンバーで同じ地域に実習に行きます。これは、その地域に根付き、関係を作り、その地域についてより深く知るためです。

菊地:1年次の衛生学体験学習では、牛を解体する施設で食肉衛生について学んだり、新幹線を作る工場やセキュリティ関係の工場に行って産業医の騒音対策を学んだりもしました。

佐藤:同じく1年次のチーム医療体験学習では、大学病院の看護部・薬剤部や、地域の薬局などに行きました。他の職種の方の仕事を見学させていただいたり、より良い連携のための方法や、医師に対して思っていることを聞いたりしました。

矢吹:実習では地域の中核病院だけではなく診療所や介護施設等にも行き、将来医師として働く地域の実情を体感できます。大変さと同時に良さもたくさん知ることになります。

佐藤:僕は、大学に入学する前から、地元の秋田で地域医療に携わりたいという気持ちを強く持っていました。これらの実習で現場の実情を見た経験は、将来地域で総合診療医として働いたときに役立つだろうと感じています。

※医学生の学年は取材当時のものです。

 

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