withコロナ時代の医学教育
~これからの医学生の学びはどう変わるか~

医学生の学習に関する調査(前編)

今回の新型コロナウイルス感染症は、私たちの社会や生活を大きく変えました。その影響は、医学部での学びにも及んでいます。

これからの「withコロナ」の社会において、医学生の学びはどうなっていくのか――。ここでは、緊急事態宣言の余波が残る6月下旬に行われた「医学生の学習に関する調査」の結果の一部を紹介します。

 

【調査概要】

調査名:医学生の学習に関する調査

調査主体:一般社団法人MyFF

調査手法:国内の医師養成機関に所属する医学生を対象とし、 Googleフォームで回答を募った。

調査期間:2020年6月21日(日)~2020年7月3日(金)

回答者数:453名

※回答者属性などの詳細は、調査主体のMyFFのWEBサイト(http://myff.jp)に記載されています。

 

Q1 回答時点直近の1週間で【大学】に行った日数は何日ありましたか。
(大学以外への外出は含めません。大学での滞在時間の長さは問いません。)

調査を行った6月下旬から7月上旬は、医学生の多くがほとんど大学に行っていないことがわかりました。

緊急事態宣言は解除された時期ですが、多くの大学が対面形式の授業や実習を再開しなかったことが推察されます。

 

Q2 2020年4~5月に、大学が提供するオンライン学習を経験しましたか。
あてはまるものをすべて選んでください。

 

 

オンデマンドやリアルタイム配信の講義は、約4分の3の学生が経験していました。通常の対面形式の講義の多くが、これらの形式で提供されたと考えられます。一方、オンライン形式の演習やグループワークなどを経験した学生は半分に届かず、双方向性のある学びの環境整備は遅れたと考えられます。

※パーセンテージは四捨五入のため、内訳の合計が100にならない場合があります。

 

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医学生の学習に関する調査(後編)

Q3 あなたは、学習において以下のことをどの程度重要だと感じますか。

(クリックで拡大)

 

Q4 以下の項目について、オンラインツールを用いた学習は、従来の対面式講義と比べて優れていると感じますか。

(クリックで拡大)

 

Q5 これまでにご自身が経験した下記の学習形態のうち、今後もその形態が継続されるとなったらあなたはどのように感じますか。

(クリックで拡大)

 

Q3からは「①自分のペースで学習を進められること」を重視する医学生が多いことがわかりました。「③仲間と質問・議論しあいながら学習すること」や「④教員・指導者に質問しやすいこと」よりも、「②自分の学習の進捗状況が同級生と比較して遅れていないこと」を重視する学生が多いことは、医学生の特徴を表していると言えるでしょう。

Q4の結果からは、オンラインツールを用いた学習について、「①自分のペースで学習を進められる」という点においてメリットを感じ、特に仲間・同級生の姿が見えず、共に学び合うことができないという点がデメリットだと認識されていることがわかります。オンライン学習については、「自分のペースで学習を進められるのは良いが、周囲の姿が見えず自分が遅れているのではないかという不安が拭えない」というのが、多くの医学生の感じ方のようです。

Q5では、様々な学習形態のうち、「③オンデマンド型の講義動画配信」が最も継続希望が多くなりました。「自分のペースで学習を進められること」を最も重視する学生が多いからだと考えられます。ただ、「④講義・資料配布等がない状態でのレポート等の課題提出」に対しては否定的なので、何かしら知識や考え方を指南してほしいというニーズは高いようです。

Q3からQ5まで一貫して「学生同士のやりとり」を取り入れた学習形態のニーズは高くはなく、「学ぶべき知識を自分のペースで習得し、水準以上の成績を収められればよい」という学習観が見え隠れします。「他者との協働学習」の重要性が指摘されていますが、医学生の半数以上はそのような学びを重視していないのが現状と言えるでしょう。