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平成27年(2015年)11月20日(金) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

財政審財政制度分科会での検討項目の問題点を指摘

財政審財政制度分科会での検討項目の問題点を指摘 写真

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 横倉会長は、10月9日に開催された財政制度等審議会財政制度分科会において示された、「骨太の方針2015」に盛り込まれた社会保障の44の改革検討項目への財務省の考え方に対して、「財政再建のため国民に犠牲を強いるものであり、病に苦しむ患者さんから過度な負担を徴収すべきではない。第3次安倍改造内閣が掲げた『一億総活躍社会の実現』のためには、国民が健康であると同時に、社会保障を充実させて国民の将来に対する不安を払拭(ふっしょく)することが最優先だ」とした上で、特に問題が大きい3項目に対する日医の考えを次のように述べた。

「医療・介護を通じた居住に係る負担の公平化」について

 財政審が、入院時生活療養費において居住費(光熱水費相当)の負担を求めていくべきと主張していることに対して、「医療機関に入院している患者は、入院治療が必要なため入院しているものであり、居住費という概念は適さない」として、光熱水費を患者に負担させることに反対の意を表明。
 更に、「疾病により、やむなく行われる医療機関への入院時の居住費は、治療の一環であることから、介護保険施設等の入所・利用と同一視すること自体が問題」と指摘し、在宅療養との公平性の確保という視点も不適切とした。

「かかりつけ医普及の観点からの外来時の定額負担等」について

 財政審が、かかりつけ医以外を受診した場合に定額負担を導入すべきと主張していることに対しては、「特に受診回数の多い高齢者には大きな負担であり、高齢者や低所得者が受診を差し控えれば、より重症化してから受診することになり、逆に医療費の高騰を招く」と反論。2011年の「社会保障・税一体改革」の議論の際にも、患者の強い反対によってその導入が見送りとなったことに触れつつ、「社会保障負担は、患者から更なる一定の負担を求めるべきではなく、所得や資産の多寡に応じて負担すべき」とした。
 更に、「かかりつけ医は患者が選ぶものであり、財政審の提案は、日本の医療の特徴であるフリーアクセスを阻害する」と指摘した。

「医療提供体制の適正化」について

 財政審が「地域医療構想を早期に策定」「病床機能報告制度について、地域医療構想策定ガイドラインと整合的な定量的基準を設定する形で見直しが必要」と主張していることに対しては、「地域医療構想は、地域の関係者が情報を共有しながら、地域の将来の医療について考えることで策定すべきものであり、拙速に策定されるべきでなく、トップダウンにより進められるべきものでもない」と反論。
 更に、「定量的な基準の設定」に関しては、例えば限られた機能で地域の救急医療等を分担している医療機関を排除することになり、地域住民の医療へのアクセス阻害、地域医療の崩壊を導くものであると批判した。
 また、財政審が「民間医療機関に対する他施設への転換命令等を付与するなど、都道府県の権限を一層強化すべき」と主張していることに対しては、「その地域で不足している機能がある場合は、地域医療構想調整会議において協議を行うべきであり、それが不調となった場合であっても、まずは公的医療機関等に対する転換指示を行い、その上で必要最小限の『要請』を民間医療機関に行うべき」との考えを示した。
 その他、横倉会長は、日医が「支払能力に応じた負担の公平化」を進めることにより財源を確保することが先決と主張していることを改めて説明。
 「骨太の方針2015」においては、改革項目の一部に「現役被用者の報酬水準に応じた保険料負担の公平を図る」ということが挙げられているにもかかわらず、財政審では「その他の課題」として扱われたことに対して、「真剣に取り組んでいないのは大変残念に思う。しっかりと議論の俎上(そじょう)に載せ、国民の理解が得られるよう、速やかに改革を進めるべきである」と指摘した。

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