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平成28年(2016年)11月20日(日) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

「『母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査』についての共同声明」について

 今般、施設認定・登録を受けていない医療機関・検査機関が「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査」(以下、NIPT)を実施しているとの報道を受けて、日医は11月2日、日本医学会、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会及び日本人類遺伝学会と共に記者会見を行い、「NIPTは一定の倫理的制御をもって行われるべきであり、今回の状況は極めて遺憾である」旨を示した共同声明を公表した。
 NIPTについては、日本産科婦人科学会が策定した「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査の指針」(平成25年3月9日)の公表を受けて、同日、今回記者会見を行った5団体が同指針を遵守(じゅんしゅ)すべきであるとの共同声明を発表。まずは臨床研究として、日本医学会臨床部会運営委員会「遺伝子・健康・社会」検討委員会の下に設置する「母体血を用いた出生前遺伝学的検査」施設認定・登録部会で認定・登録された施設において、慎重に開始すること、また、実施に当たっては、『ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針』『医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン』に則って行われるべきであるとしていた。
 今回公表した共同声明は、同指針を無視する形でNIPTを実施する医療機関・検査機関があるとの報道がなされていることを受けて、急遽(きゅうきょ)、取りまとめられたものであり、3つの事項(別掲)を求める内容となっている。
 当日の記者会見には、横倉義武会長、髙久史麿日本医学会長、藤井知行日本産科婦人科学会理事長、木下勝之日本産婦人科医会長、福嶋義光日本医学会「遺伝子・健康・社会」検討委員会委員長らがそろって出席。
 横倉会長は、「ゲノム情報は極めて機微性の高い個人情報であり、必ず、検査を受ける方への遺伝カウンセリングの体制整備の下に行われなければならない」との認識を示した上で、日医として、会員に対し「医師の職業倫理指針」を遵守(じゅんしゅ)した診療行為を行うよう徹底していきたいとした。
 髙久日本医学会長は、平成25年の共同声明後、直ちに、日本医学会「遺伝子・健康・社会」検討委員会の下に「母体血を用いた出生前遺伝学的検査」施設認定・登録部会を設置し、平成28年11月2日現在、NIPTに関する臨床研究施設として認定された全国76施設においてNIPTが8631例実施されていることを報告。
 その上で、今回、報道された実施施設については、男女の判定等、認定外の検査もなされていることに触れ、「十分な遺伝カウンセリングが行われない状況の下、NIPTを受けることは、さまざまな問題が広がる恐れもあり、報道各社には、国民、特にこれから子どもを授かろうとする方々に、この問題についての注意喚起をして欲しい」と協力を求めた。

「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査」についての共同声明要望事項
  1. 「母体血を用いた出生前遺伝学的検査」施設認定・登録部会での認定を受けずに当該検査を実施している医療機関や医療従事者、また受諾して検査を請け負っている検査機関や仲介業者等は、いずれも直ちに検査の受諾及び実施を中止すべきである。
  2. 出生前診断の実施に際しては、十分な遺伝カウンセリングが行われることが必要であり、私達は、わが国における遺伝カウンセリング体制のより一層の普及と充実、医療従事者への教育、及び国民に対する啓発活動に尽力する所存である。
  3. 今回のような極めて遺憾な事態の出来を受け、これの沈静化を図り、また今後、類似の事案の再発を防ぐためにも、私達は出生前に行われる遺伝学的検査等の医療技術の利用のあり方については、日本産科婦人科学会のみでの対応では限界がある点に鑑み、日本医学会に所属する全ての学会は、それぞれの学会に所属する会員への監督を適正に行い、また日本医師会に所属する全ての会員は指針等を遵守(じゅんしゅ)するよう求める。

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