小森貴前日本医師会常任理事は、6月29日の日医定例記者会見で、「予防接種・感染症危機管理対策委員会」が、近年発生した感染症への現場対応、化血研問題等を含めた予防接種の安全実施に係るあり方について取りまとめた報告書を、6月8日に足立光平委員長(兵庫県医師会副会長)から横倉会長に提出したことを報告し、その概要を説明した。
報告書は、エボラ出血熱、デング熱、MERS、ジカウイルス感染症等への現場対応、化血研問題等を含めた予防接種の安全実施に係るあり方について、委員会委員に加えて、厚生労働省や内閣官房の担当官にオブザーバーとして出席してもらった上で、各都道府県での実態に即した具体的意見交換を行い、国の施策のあり方、日医としての関わり方等も含め検討を行った結果、取りまとめたものである。
小森前常任理事は、委員会では検討経過を踏まえ、主な論点から関係諸方面への「10の提言」が取りまとめられたとし、その内容を説明するとともに、「提言は今後の検討、対応を求めるものとなっている」と述べ新執行部への対応に期待を寄せた。まとめられた提言は以下のとおり。
「感染症危機管理対策について」
1.迅速で正確な情報収集・提供
グローバル化した各種感染症の発生に対する迅速で正確な情報収集と提供体制の確立。国としての危機管理責任と現場で活きる対策への支援。
2.積極的な社会的啓発
新興感染症等発生時の医療機関への受診の仕方等に対する社会的啓発。検疫所や保健所と連動した標準的なポスター等の迅速な提供。
3.体制整備・訓練
感染症指定医療機関の専門医配置徹底も含めた一層の拡充。地域医師会・関係団体も含めた研修・実地訓練の実施、防護具の配付。
4.研究・開発
病原体研究施設(BSL4等)の拡充、ワクチン・治療薬の研究開発体制の強化。
5.関係機関・団体との連携
WHO等国際機関や動物感染症他関係機関・団体との連携強化。
「予防接種の安全・安心な実施拡充について」
1.品質管理・安定供給
ワクチン製造から保管・供給にいたる流通体制の徹底した見直し・改善。化血研問題を教訓とした民間依存や輸入依存ではない国としての体制整備。
2.安全な接種体制の整備
定期接種の実施時期・接種量・接種間隔等の判り易い設定の検討。過誤接種・事故防止体制の確立。
3.費用負担の透明化・軽減
任意接種も含めた価格設定の透明化と自己負担の軽減。
4.安心して受けやすい体制
国内何処でも安心して受けられる広域化と自治体間格差の解消。予防接種台帳整備と生涯管理、予診票の統一、母子健康手帳の活用。正確な予防接種率の把握とその向上。
5.副反応等への正しい理解
予防接種副反応・有害事象についての正しい理解と有効な接種の促進。