日医定例記者会見 6月29日
横倉義武会長は、6月25日開催の第137回定例代議員会において3期目となる会長に選任・選定されたことを受け、執行部一丸となり総力を挙げて会務の遂行に臨む決意を述べた。
同会長は、まず、消費税率10%への引き上げが2年半再延期されたことによる社会保障の財源不足により、地域で必要かつ十分な医療・介護サービスが受けられなくなれば、最も不利益を被るのは地域の住民の方々であるとして、消費税財源に代わる社会保障財源を別に確保するよう、政府に対し強く要望していく考えを示した。
加えて、イギリスのEU離脱により国際経済の先行きに混乱が予想されることにも触れ、「経済の混乱という国民の不安が高まる時こそ、セーフティーネットとしての社会保障、特に国民皆保険をしっかりと堅持していかなければいけない」と主張した。
また、終末期の医療のあり方についても言及し、患者の尊厳、生活の質をより重視した対応が考慮されるべきであり、そのためにも、リビングウィルの更なる普及・啓発のために、医療関係者のみならず、さまざまな分野の関係者を交え、議論を進めていく必要があると指摘。「財政の観点ではなく、人間の尊厳を持った終末期の在り方を、国民と共に考えていくことが大切だ」と述べ、今後、会内委員会で検討を行っていく意向を示した。
更に、「今回の任期中には平成30年度に予定されている、診療報酬と介護報酬の同時改定、並びに、第7次医療計画と第7期介護保険事業(支援)計画の開始に向けた議論に臨んでいかなければならない」と発言。
その上で、代議員会で大きな論点となった、「高額医薬品」「新たな専門医の仕組み」「医師偏在」「療養病床」の4点について解説した。
「高額医薬品」に関しては、治療効果の高い医薬品を適正に評価する一方、適正使用のガイドラインを整備し、高い専門性を持った医師が適切な処方をするなど、生涯教育を通じて示していくことも日医の役割であるとするとともに、適切な薬事承認並びに適正な薬価を決定する仕組みの構築に全力で取り組んでいくとした。
「新たな専門医の仕組み」については、地域医療への影響を不安視する医療現場の声が強いことから、一度立ち止まって、日本専門医機構において新たな執行体制で集中的な精査を行い、各学会と十分協議するよう求めたことを説明。
その上で、6月27日に発足した日本専門医機構の新たな執行部に期待するとした。
「医師偏在」については、国や知事が強制的な権限を発動するものであってはならないとした上で、医師会を中心とした自律的な行動を基本としたものとなるよう、制度づくりや、医師を目指す若い方々も含めた啓発に取り組んでいくとした。
「療養病床」については、新類型の報酬が公表されるのは平成30年2月頃となることから、現場や患者が混乱しないよう、十分な経過措置としての再延長を求めていくとした他、その間に、療養病床からの移行に限って、要件をできるだけ緩和した上で、転換を希望するところは全て転換ができるようにすることが必要との考えを示した。