診療ガイドラインQ&A 教えて、山口先生!
日本医療機能評価機構で執行理事を務める山口先生に、診療ガイドラインについてお話を伺いました!
Q1 診療ガイドラインは、どこで手に入れられますか?
診療ガイドラインは学会や研究会等が作成し、論文や書籍、学会ホームページなど、様々な媒体に掲載されています。日本医療機能評価機構が運営するMindsウェブサイトでは、作成団体や出版社等の協力のもと、様々な疾患の診療ガイドラインを無料で掲載しています。ぜひ、Mindsのウェブサイトにアクセスしてみてください。
また、スマートフォンやタブレット向けアプリ「Mindsモバイル」も提供しています。実習中や臨床現場でも、診療ガイドラインを活用してください。
Q2 患者さんは、診療ガイドラインのことを知っているんですか?
残念ながら、まだ知らない人がほとんどです。しかし患者さんは「信頼できる情報」を求めている場合が多いですから、医師の方から診療ガイドラインについて簡単に説明したうえで「一般向け解説」などを紹介すると良いと思います。
診療ガイドラインをもっと多くの方に知っていただけるよう、Mindsでは普及・広報にも力を入れています。
Q3 診療ガイドラインは、どのように作られるのですか?
新しい治療法や臨床現場のニーズに応える形で、学会・研究会などにより、科学的に正しい手順を踏みながら作成されます。作成には中堅の医師が関わることも多いので、皆さんも将来参画することがあるかもしれません。
また最近、ガイドライン作成に市民・患者が参加する動きも始まっています。今後は医師・医療従事者だけで推奨を決めるのではなく、市民・患者の価値観も踏まえて作られるようになっていくでしょう。
Q4 診療ガイドラインに沿って治療すれば、必ずうまくいくのでしょうか?
診療ガイドラインで示される推奨が、唯一の「正答」ではありません。あくまでも「益」と「害」のバランスを見たときに、「益」の方が大きいと考えられる治療法が推奨されているということです。医療は不確実性を伴う営みですから、患者さんによっては、結果的に「害」の側面が多く生じてしまう可能性もあるかもしれません。診療ガイドラインを使うことは、医療という不確実な営みの中で、より「益」を得られる確率が高い治療法を、患者さんの思いや価値観を踏まえながら選択する、ということです。
「協働的意思決定」を目指して
山口 直人先生
日本医療機能評価機構 執行理事
私は医師になって三十数年ですが、その間に医療はめざましく進歩しました。以前は助からなかったような疾患に対しても、新しい治療が次々に開発されています。その流れの中で、益も害もとても大きい治療がどんどん出てきました。そんな状況を目の当たりにして、「この治療の結果起きることに対して、誰が責任をとるんだろう」という疑問が芽生えました。仮に、治療の責任は医師が全てとるというのなら、医師だけで治療を決めてもいいのかもしれません。けれど、治療によって生じた結果を実際に引き受けるのは、医師ではなく患者さんです。ですから、治療について患者さんに納得して受け入れてもらうというプロセスが、医療においては必要不可欠ではないかと思います。
そんな思いからスタートして、私は「協働的な治療方針の決定」というテーマに取り組んできました。これからの医療を担う医学生の皆さんにも、決して無関係ではない課題です。ぜひ、自分ごととして考えていただければと思います。
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