医療における消費税問題
医療の消費税をめぐって、
医療機関と国民にかかっている 負担の見直しが必要です。
控除対象外消費税と 医療機関にかかる税負担
みなさんは、医療における消費税の仕組みをどのくらいご存知ですか? 消費税は、モノを買ったりサービスを受けたりする取引において、最終消費者に課税される税金です。中間事業者は売上にかかる税額から仕入れにかかる税額を控除して国・地方自治体に差額を納付していますが、税を実際に負担しているのは最終消費者で、各事業者には税の負担はかかっていません。
原則として、消費税は国内におけるすべてのモノ・サービスに課税されますが、例外となる取引もあり、社会保険診療もそのひとつです。病気になったり怪我をしたりして治療を受けている患者さんの診療費や処方薬には、消費税はかからない仕組みになっているのです。 ただし、診療を行うために購入する医薬品や設備投資には消費税がかかっています。結果、医療機関が仕入れ分の消費税を控除できず、その分を自ら負担せざるをえない事態になっているのです(図)。このように中間業者の負担となる消費税は、控除対象外消費税と呼ばれています。
現状では、診療報酬に対して1.53%を上乗せすることで、負担の解消が試みられています。しかし、ほとんどの医療機関でそれを上回る控除対象外消費税が発生しており、現在の上乗せ額では不十分です。なお、消費税が10%まで引き上げられた場合には、今の2倍の控除対象外消費税が発生することになり、問題は更に深刻なものになるでしょう。
消費税法を改正し ゼロ税率へ
問題を根本的に解決するには、控除対象外消費税が発生しない仕組みを作る必要があります。そのためには、消費税法を改正し、社会保険診療を課税取引にしなければなりません。
ただし、その際に患者さんの負担が増えてしまわないよう、配慮することが必要です。そのために日本医師会が提案しているのが「ゼロ税率」の制度です。ゼロ税率では、税率がゼロなので患者さんの負担は増えませんが、課税取引であることにより、医療機関が支払った消費税額を控除することが可能になるのです。
「医療に関わる消費税の仕組みは、医療機関にとっても患者さんにとっても、大きな問題をはらんでいます。この問題を解決し、合理的な取引と安定した医業経営を行っていくために、日本医師会は税制の改正に向けての取り組みを行っています。」(三上常任理事)
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