小森貴・釜萢敏両常任理事は11月19日、大学を所管する文部科学省を訪れ、馳浩文科大臣に「国家戦略特区による医学部新設」に反対する声明を手渡した。
日医はこれまで、日本医学会、全国医学部長病院長会議と共に取りまとめた声明を、塩崎恭久厚生労働大臣、下村博文前文科大臣に提出している(別記事参照1、2)が、今回は第3次安倍改造内閣発足を受けて、新たに就任した馳文科大臣に、国家戦略特区による医学部新設に反対していることを改めて説明した。
同声明では、(1)養成費用も含めた医師養成数の議論が必要、(2)これからの医学部新設は医師不足対策にはならず、むしろ医療の質を低下させる懸念がある、(3)国際的医療人材の育成は既存医学部・医科大学で既に着手されている、(4)地域医療の再生を妨げる恐れがある─ことを指摘。3団体が日本の医育、医学、医療界を代表して、国家戦略特区による医学部新設に反対するとしている。
当日の会談で、小森常任理事は、「国家戦略特別区域における医学部新設に関する方針」に、「養成された医師が、当初の目的に反して一般の臨床医として勤務するようであれば、長期にわたり社会保障制度に影響を及ぼす可能性もあり、十分な検証を行う」と明記されていることを強調。医学部新設の問題点としては、(1)教員確保のため、医療現場から多くの教員(医師)を引き揚げざるを得ず、地域医療の崩壊を加速する、(2)人口減少など社会の変化に対応した医師養成数の柔軟な見直しを行いにくくなる─等を挙げ、改めて医学部新設に反対であると主張した。
また、釜萢常任理事は、(1)医師の養成数は2008年度から既に1637人増加しており、その数は新設医学部の定員を100名とすると16校新設した数に匹敵すること、(2)現在の課題は、医師の地域及び診療科の偏在であり、医師養成の総数を増やしても解決にはつながらないこと、(3)医師養成には、国民の負担による多額の養成費用が必要であること、(4)国際医療人の育成は既に各大学で実施されており、特区での実施に意味はないこと─を説明。
その上で、「人口が減少する中、今後の医師の養成数を検討した上で、慎重に対応する必要がある。こうした状況の中で、新たな医学部設置を認めることはできない」と述べ、理解を求めた。
説明を受けた馳文科大臣は、一定の理解を示した上で、「今後もいろいろな方から意見を聞きながら、しっかりと検討していきたい」と答えた。