医師のみなさまへ

2021年2月10日

第4回 生命(いのち)を見つめるフォト&エッセー 受賞作品
小学生の部【優秀賞】

「お父さんのがん」

溝口 美桜 (10歳)福岡県

 わたしのお父さんはがんです。わたしがようち園の時に病気になりました。100万人に1人しかかからない、とてもめずらしいがんです。大きな手術を2回しましたが、もう治らないとお医者さんに言われて、こうがんざいをしています。少しでも長生きするためです。

 お父さんは、わたしとの思い出を作ろうねと言って、わたしといっしょにできることを考えてくれます。わたしはかん国のガールズグループのファンで、お父さんもメンバーや歌を覚えてファンになりました。去年、わたしはそのガールズグループのコンサートに行きたかったけど、大人気でチケットが全然取れませんでした。それでお父さんは「日本でチケットを取れないなら、外国のコンサートを取る。」と言って、マレーシアのコンサートを取りました。

 夏に、わたしと2人でマレーシアに行きました。コンサートでは、お父さんはグッズを買う時に、「わざわざ日本から来たんだからお願い。」と言って、お店の人からおまけしてもらいました。となりの席の台わんから来たファンと話して、外国の人と一しょにもり上がりました。次の日には、お父さんのマレーシアの友達と会い、ドッグランを見せてもらって、ドライブして、楽しいことがいっぱいでした。お父さんは薬のせいでオレンジやレモンを食べられません。レストランでご飯を食べた時に水が出てきて、私は水の入ったジャーにレモンのスライスが入っているのを見つけて、お父さんに教えました。レストランの人に水をかえてもらって、「美桜ちゃんありがとうね、助かったよ。」と言ってくれました。それから、お父さんの食べるものにオレンジなどが入っていないか、パッケージのうらを見て、わたしが確にんしています。

 でも、わたしは前にお父さんをあまり好きじゃなかった時があります。お父さんがおこりっぽくなったからです。こうがんざいの副作用が強くて、ずっとつえを使って歩いていました。お父さんと歩くとゆっくりになります。すると、後ろからすごい速さで来る自転車や、横だん歩道で止まらない車とぶつかりそうになって、お父さんは、「おいこらお前、前を見ろ。」とどなります。すごく大きな声なので周りの人が見るし、けんかになりそうで、ドキドキします。おこりっぽい時のお父さんはあまり好きではなかったです。

 もうお父さんはおこらなくなりました。冬の家族旅行でホテルの朝ごはんを食べているとき、「美桜ちゃん、今までごめんね。もうおこらないから。」と言いました。わたしの好きなフレンチトーストを食べているときでした。うれしくなってグッジョブポーズをしました。おこるのをみんながいやがっているので、直してくれたんだと思います。

 体がきつくない休みの日には、時々フレンチトーストを作ってくれます。お父さんに長生きしてほしいです。

第4回 受賞作品

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