看取りを学ぶ(前編)

医学生にとって、人が亡くなる過程を知っておくことは、どのように重要なのでしょうか。総合在宅医療クリニックで実習を受けた医学生・臨床研修期間中に2か月間研修を受けた若手医師・現在非常勤で働く医師、そして院長の市橋先生にお話を伺いました。

早期から看取りに関する教育を

西城 卓也先生 岐阜大学 医学教育開発研究センター/ 総合在宅医療クリニック

私は、岐阜大学の医学教育開発研究センターの教員で、卒前・卒後教育に携わっています。総合診療医として、このクリニックの診療・当直も行っています。

これまで総合診療の世界に関わってきたものの、在宅で、ご家族も含めて患者さんを診るような機会はあまりありませんでした。こちらで勤務するようになって、ようやくそういった経験を積むことができるようになっています。

医学生の皆さんも、大学の授業で在宅医療や看取りに触れる機会は、あまり多くないのではないかと思います。「死の間際には下顎呼吸が起こる」といった医学的知識は学んでも、患者さんを看取るまでの経過をストーリーとして捉え、その中で医師は何ができるのかを学ぶ機会はほとんどないのが現状です。しかし、在宅医療のニーズが高まる現在、医師が若いうちから終末期医療や看取りに触れるのは、必須のことだと感じています。

もちろん、皆さんは実習や臨床研修の多くの時間を、大学病院で疾患や病態を体系的に学び、診療の基本を身につけるべく過ごすことになるでしょう。そういったトレーニングが医師にとって必要なのは、言うまでもありません。しかし、退院した後の生活、家で暮らしながらの医療、家族、そして最後の看取りのことまで学ぶことも、また重要なんです。

若くて感受性が豊かなうちに現場を見るだけで、ずいぶん視野を広げることができると思います。臓器や疾患だけ、入院している患者さんだけではなく、患者さんが退院した後の生活や家族のことまで、思いを馳せることのできる医師になってほしいです。

 

多くの医学生に看取りの現場を見てほしい

岐阜大学医学部6年 Aさん

私は岐阜大学の6年生です。現在選択実習の期間中で、たまたまこのクリニックに来る機会をいただきました。

病院実習では急性期の患者さんを診る機会が多いので、病院にいる患者さんに関して「そろそろ危ないのかな」などと感じることはあっても、看取りまで関わった経験はありませんでした。患者さんが退院して、在宅でどのように過ごし、亡くなっていくのかということも、学ぶ機会はありませんでした。

今日の実習では、COPD(慢性閉塞性肺疾患)で予後が長くない患者さんの訪問診療に同行させていただきました。ご家族が患者さんの周りに集まっていて、「とにかく最後まで一緒にいてあげたい」「安らかでいてもらいたい」と思っていらっしゃることが伝わってきて、とても印象的でした。

これからの時代、病院を退院した後の患者さんを診る医師は、今にもまして必要になると思います。私は偶然にも在宅医療の現場を見せていただくことができましたが、他の医学生にも、病院の外の医療について知ってほしいです。たとえ急性期を診る医師になるとしても、退院後の患者さんを診る医師や他職種の存在を知っていることは、必ず役に立つはずだと思います。できることなら全ての医学生が、在学中に在宅医療の現場や看取りの場面を見られるような仕組みになればいいな、と思いました。

 

 

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