2024年2月21日
第7回 生命(いのち)を見つめるフォト&エッセー 受賞作品
小学生の部【優秀賞】
「君がいてくれるから」
蛯原 丈翔(11歳)宮崎県
「学校へ行きたくないし、病院にも行きたくない。」と、先日、Kは言い出した。
僕とKは、クラスメイトで一番の仲良し。授業で分からないところを、お互いに勉強したり、宿題を2人でしたり、いつも2人で一人前。Kは心臓病で具合が悪い。僕はしゃべることができない。体を激しく動かせないKの分を、僕が体育でボールを取ってあげる。学習発表できない僕の分を、Kがスラスラと代読してくれる。毎日、毎日、支え合って学校生活を送っている。
Kが時々、体調不良になると学校を欠席する。すると、僕の学校生活は、めちゃめちゃになる。授業は分からないまま、ただ聞いているだけ。不安な中、座って会話ができずに、首を縦横に振るだけで、コミュニケーションを取れず誰とも交われない。静かすぎて、忘れ去られているクラスの中での僕の存在。
Kとは、ずっと一緒にいるからか、何も言葉を交わす必要がない。僕の目や手足の動きで、気持ちを大体、分かってくれる。学校の先生や親にも理解してもらえないことでも心が通じる。改めて思い返すと、以心伝心で一度もけんかしたことがない。
今日、各家庭と学校で、社会のZOOM授業に変わり、Kと僕が、休憩時間に、パソコン上で2人きりになった。学校とは違う雰囲気だから、お互いぬいぐるみを使って会話をしてみた。「大人になったら、2人で世界の中心へ行こう。」と、Kのぬいぐるみが言う。「うん、大人になったら行こうネ。いつも、Kが居てくれたから、学校が楽しいし、僕は学校へ行ける。」紙へペン書きし、画面へ向ける。「僕もだよ。丈翔が居るから、病気を治して学校へ行きたい。」Kのぬいぐるみと一緒に笑って画面に出てくれる。「良かった。ずっと、ずっと、学校で一緒だよ。」筆談する。
ZOOM授業後、手を振りながら、Kが明るく前向きになって、また学校へ行きたいと言ってくれたことが、うれしかった。大人になったら、世界の中心へ行こうと約束したから、早速、社会の教科書を調べる。行ってみたい国だらけで、約10年後、世界の中心になる国は、いったいどこだろう? 全く見当が付かないから、明日、ZOOMでKに聞いてみよう。Kはどこの国へ行きたいと言うだろうか? 2人の将来の目標ができた。Kが居てくれるから、自分の世界が広がって楽しみで仕方ない。僕の人生は前よりも、ずっと良いものになった。いつまでも友達でいて下さい。これからも、君と一緒に、たくさんの思い出を作っていきたい。
第7回 受賞作品
一般の部: 【 厚生労働大臣賞 】
【 日本医師会賞 】
【 読売新聞社賞 】
【 審査員特別賞 】
【 審査員特別賞 】
【 入選 】
【 入選 】
中高生の部:【 文部科学大臣賞 】
【 優秀賞 】
【 優秀賞 】
【 優秀賞 】
小学生の部:【 文部科学大臣賞 】
【 優秀賞 】
【 優秀賞 】
【 優秀賞 】