【外科】宮﨑 佳子先生
(益田赤十字病院 外科)-(前編)

――宮﨑先生はなぜ外科を選ばれたのですか?
宮﨑(以下、宮):実は最初は、整形外科医志望だったんです。整形外科に興味を持ったのは、高校時代に柔道で怪我をし、島根大学病院で手術を受けたことがきっかけでした。高校にはスポーツ推薦で入学していたのですが、その手術を機に医学部を目指すようになりました。
でも、大学時代に臨床実習で色々な科を回るうち、消化器外科に惹かれるようになったんです。特に魅力的だったのは腹腔鏡の手術です。一般の開腹手術では術者しか術野が見えません。ですが腹腔鏡では、手術に関わる全員が同じ画面を見て、互いに確認し合いながら進めていけるんです。実習中は、学生の私でもチームの一員になれたような気がして、とても嬉しかったのを覚えています。
それに、島根大の外科には消化器外科以外にも、乳腺外科や小児外科など様々なグループが所属しています。色々な分野を幅広く経験したいと思っていた自分にぴったりだと感じ、外科への入局を決めました。
――卒業後、臨床研修はどちらの病院に行かれましたか?
宮:島根大学病院です。私が選んだのは「外科系重点プログラム」というものです。2年目には県内の市中病院や、沖縄の浦添総合病院など、外の病院を多く回ることができました。
――専門研修の内容を教えてください。
宮:私は臨床研修2年目の1月から、専門研修の一環として島根大学の外科を回りはじめました。まず上部消化管のグループに3か月。4月からの3か月は、下部消化管グループ。その後、乳腺・小児・下部消化管の各グループと、呼吸器外科・心臓外科・外傷センターを回りました。今年の2月からは、再び乳腺外科をじっくり学んでいます。
当医局では、入局2年目には外の病院に出ることになっています。私は今年の7月から、出身地である益田市の赤十字病院に行く予定です。益田では、虫垂炎などの小さめの手術の執刀や術後管理をするほか、外来も担当することになりそうです。
3年目には大学に戻り、そこでサブスペシャリティを決める人が多いです。私は今の段階ではまだ、消化器外科と乳腺外科とで迷っています。もし消化器外科に進むとしたら、内視鏡外科学会技術認定医の資格を取得するくらいまで技術を磨きたいと思っています。
【外科】宮﨑 佳子先生
(益田赤十字病院 外科)-(後編)
――印象に残っている症例はありますか?
宮:臨床研修1年目の、初めて執刀した腹腔鏡の手術です。ある患者さんが、がんの術後の血液検査で腫瘍マーカーが上昇していたため、がんが再発して腹膜播種などが生じていないかどうか確認する審査腹腔鏡を施行したんです。私はそれまで、ヘルニアや乳腺などの手術の経験はあったものの、腹腔鏡で実際に鉗子を持って執刀するのは初めてでした。実際にお腹の中を見てみたら結石のようなものがあって、病理診断に出すため、上級医の指示でそれを切りました。今思えば本当に簡単な手術でしたが、鉗子を持つ手の感覚が想像と実際とでは異なることに戸惑いを覚えたこともあって、心に残っています。
――最後に、医学生に向けて、外科の魅力をお伝えください。
宮:上級医の先生は、「外科は最後の砦」とよくおっしゃいます。自分の手で患者さんを救ったり、症状を和らげたりできるところは、外科ならではの魅力と言えるかもしれません。
また個人的には、消化器外科も乳腺外科も、がんを診られるところに惹かれています。手術だけでなく術後の化学療法や、ときには緩和ケアまで、幅広く関わることができるんです。がん以外の疾患についても、「切って終わり」ではなく、診断から治療まで一貫して関われるのが魅力ですね。
最近は特に、術前術後の管理に奥の深さを感じています。例えば、大腸がんの患者さんで腸の通りが悪くなっている方がいたら、術前の絶食期間を延ばします。術後は体力の低下を防ぐため、なるべく絶食期間を短くし、きちんと疼痛管理をして早期離床を促します。学生の頃は手術の見学だけで精いっぱいで、病棟でのこうした細かな調整のことは気に留めていませんでした。でも、今になるとその大切さがよくわかります。学生の皆さんも、外科を見学する際は、手術だけでなく術前術後管理の様子まで見ていってもらえたらいいなと思います。
医学部卒業 | 2015年 島根大学医学部 卒業 | 学生時代は、同級生と一緒に医療系のサークルを作って、BLSやACLSのトレーニングをしたり、外から先生を呼んで臨床診断の勉強をしたりしていました。 | 卒後1年目 | 島根大学医学部附属病院 臨床研修 | この頃には、消化器・総合外科に進もうと決めていたので、「外科系重点プログラム」を選びました。 |
卒後3年目 | 島根大学医学部 消化器・総合外科 専門研修 | |
卒後4年目 | 島根大学医学部附属病院 消化器・総合外科 益田赤十字病院 外科 | 来年、大学病院に戻った時には、専門分野を決めて大学院に入ることになると思います。 |

2015年 島根大学医学部 卒業
2018年7月現在
益田赤十字病院 外科



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