FACE to FACE
鈴木 優子 × 石橋 拓真
今回は対談形式でお送りします。
鈴木(以下、鈴):私たちは今、宇宙医学に興味のある医学生・若手医師たちのコミュニティの立ち上げに取り組んでいます。医学生の中にも、「宇宙医学」が具体的にどんな学問なのかイメージできないという人もいるかもしれません。
石橋(以下、石):宇宙医学は「宇宙で人が暮らすための医学」という臨床医学的な側面と「宇宙空間で、通常の重力下では難しい実験等を行い、地上の医学に活用する」という基礎医学的な側面がある、とても幅広い学問分野ですよね。鈴木さんが宇宙医学に興味を持ったきっかけはどんなものでしたか?
鈴:私は子どもの頃から青空を眺めたり、星を見たりするのがとても好きでした。進路を考えていた高校生の頃、空や宇宙は好きだけど、衛星について調べたり、宇宙の起源に関わる素粒子の研究室の見学に行ってみたりしてもあまりピンとこなくて、迷っていました。でもある時、図書館でJAXAの『「宇宙医学」入門』という本に出会い、人を相手にしながら、宇宙に関われる宇宙医学という分野を知り、「これだ!」と思ったんです。
石:そうだったんですね。僕は、子どもの頃から宇宙飛行士に憧れていました。宇宙飛行士になるためには、まず何らかの理系分野の専門性が要求されます。人がいるところには必ず医療の需要がありますから、宇宙飛行士がチームで宇宙に行く際にも医療の知識は必要とされるだろうと考え、医学部を受験しました。現在は、宇宙医学についてもっと学んでから宇宙医学との関わり方を考えたいと思い、宇宙医学分野の先生方にお話を伺ったり、宇宙医学に関するイベントを企画したりといった活動をしています。
鈴:私も、宇宙に関心のある多分野の学生が集まって活動している「宇宙広報団体TELSTAR」に関わったりしながら、将来宇宙医学とどう関わっていけるのかを考えています。そのなかで感じたのは、興味があることを周囲に表明することが大事だということです。宇宙医学に興味があることを自ら発信するようにしていたら、友達や先輩、先生方が同じく興味がある学生とつなげてくださったり、宇宙医学に関わっている先生を紹介してくださったり。大学も学年も違う石橋君と知り合ったのも、宇宙医学の学会の先生から学生同士ということで紹介してもらったのがきっかけなんですよね。
石:僕も英語のプレゼンテーションの授業で、毎回宇宙について話をしていたら、同級生が宇宙ベンチャー企業の方につないでくれたことがあります。「学生の自分が教授や企業に連絡するのは気が引ける…」という人もいるかもしれませんが、むしろ学生のうちに挑戦してみた方がハードルは低いと思います。よほどのことがない限り、いきなり怒られたりはしないので(笑)。宇宙医学の学会の先生方も、若手不足が嘆かれていることもあってか、学生の参加を歓迎してくださいますよね。
鈴:一方で、「宇宙医学に興味はあるけどどう参画したらいいかわからない」という学生もいて、そのすれ違いにもどかしさを感じていました。私たちが立ち上げに取り組んでいる若手のコミュニティは、まずはそういう「興味はあるけどどうしたらいいかわからない」という学生が宇宙医学に関わるための窓口から始めて、将来的には、学生と宇宙医学の研究者との架け橋にもなれたらいいなと思っています。
石:少しでも興味があったら、気軽に連絡してほしいですね。
鈴木 優子(大阪医科大学5年)
1993年愛知県生まれ。高校卒業時より宇宙医学に関心を持つ。大学2年から宇宙広報団体TELSTARに所属し、他分野の学生とともに記事執筆やイベント企画を行う。大学3年でJAXAのインターンシップを経験し、大学4年では生理学クイズ大会に携わる。「人とのつながり」のパワーをひしひしと実感している今日この頃。
石橋 拓真(東京大学2年)
1997年生まれ。「医学のバックグラウンドから宇宙開発に貢献する」ことをテーマに活動中。NPO法人Bizjapanの代表を務め、その中の宇宙医学プロジェクト「M x Space」を主導。宇宙開発フォーラム実行委員会にて渉外を担当。
※医学生の学年は取材当時のものです。
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