嚥下機能をきちんと見極める


野村 泰造 90歳
20年ほど前に妻に先立たれた。息子夫婦が時折見舞いに訪れている。認知症が進んでおり、心機能も落ちている。
甲斐 護(介護リーダー)
老人ホームの介護リーダーで、野村さんの担当でもある。物腰やわらかな雰囲気。四堂先生を信頼している。
むせてしまう、本当の理由
野村さんは、食事中にむせることが増えてきたため、嚥下機能の低下が疑われています。誤嚥性肺炎の予防のため、先月からペースト状にしたミキサー食を提供されるようになりましたが、野村さんは気に入らない様子。食が進まず、低栄養も懸念されています。
この状況でまず検討しなければならないのは、「嚥下機能は本当に落ちているのか」という点です。本人の嚥下機能に問題がなくても、食事介助の仕方によってむせてしまうことがあるからです。例えば、食事中の姿勢に問題はないか、一度に口に入れる量が多すぎないか、口に食べ物を運ぶペースが速すぎないか、といったことに気を付けて、介助方法を見直してみる必要があります。また、体温に近い温度の食品は飲み込みにくいため、温かい料理は温かく、冷たい料理は冷たく提供するようにしたり、食前に口内を潤しておくといった工夫も有効です。
ミキサー食は、提供する側にとっては安全な優れた食事ですが、料理の味や匂い、食感が失われており、見た目にも美味しそうとは思いにくいため、食べる楽しみや意欲を低下させてしまうことがあります。まずは嚥下機能評価によって、どの程度の食事までは飲み込めるのかを正しく評価してもらい、その人の機能の許す範囲で充実した食事を摂ってもらうことが、QOLの維持・向上につながるでしょう。



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