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【泌尿器科】塩見 叡先生
(岩手医科大学医学部 泌尿器科講座)-(前編)

塩見先生

――泌尿器科に興味を持ったのはいつ頃でしたか?

塩見(以下、塩):5年生の臨床実習の時に手技を経験させてもらい、面白そうだと思いました。授業では泌尿器科が外科系というイメージがなかったのですが、実際に回ってみると手術の機会も多く、意外と外科らしいと感じました。一方で泌尿器科では、腎不全や感染症といった内科的な疾患も診ます。私は、外科も内科も両方やりたいと思っていたので、泌尿器科はとても魅力的でした。

――兵庫県出身とのことですが、地元に帰らず、岩手に残られたのですね。

:はい。泌尿器科の教授がとても熱心な方で、この先生のもとで学びたいと思ったからです。また、大学在学中に東日本大震災を経験したこともあり、育ててくれた岩手に恩返しをしたいという思いもありました。

――臨床研修は、県立久慈病院で行われたのですね。

:はい。久慈病院は久慈医療圏の唯一の中核病院として、すべての救急患者を受け入れています。臨床研修では救急をしっかり学びたかったのと、先輩からの評判も良かったこともあって、久慈病院を研修先に選びました。ここでは夜間当直は基本的に臨床研修医に任されていたので、内科も外科もある程度は診られるようになりました。

また岩手県では、県全体で臨床研修医を育てる取り組みが盛んに行われています。例えば、臨床研修医の合同勉強会や、熱心な救急医が沿岸部の病院を回って指導してくださる機会があり、とてもありがたかったです。

――救急以外には、どんな診療科を回りましたか?

:特に力を入れたのは循環器です。岩手では、腎不全や慢性腎臓病などの腎臓内科領域の疾患も、主に泌尿器科が診ているんです。腎臓病の患者さんは体に水が溜まりやすく、溢水や胸水なども診る必要があるため、循環器はしっかり学びました。

 

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【泌尿器科】塩見 叡先生
(岩手医科大学医学部 泌尿器科講座)-(後編)

――専門研修では、どんなことから修練を積むのですか?

:手技としては、まずは前立腺生検や膀胱鏡検査、尿管ステント交換、透析用のカテーテル挿入などを行います。シャント造設術や経尿道的膀胱腫瘍切除術なども少しずつ経験します。泌尿器科はとにかく手術が多く、2時間程度のものから10時間以上のものまで様々です。早いうちからどんどん経験できるので、手を動かすのが好きな人には向いていると思います。

また近年はロボット手術も盛んで、当院では多くて週に4回、ダヴィンチによる手術が行われています。もちろんその助手に入ることもできますよ。

――疾患としては、どのようなものが多いですか?

:大学病院だと、やはりがんが多いですね。そして、例えば同じ尿路上皮がんでも、膀胱がん・尿管がん・腎盂がんなど種類が様々です。それぞれ検査や抗がん剤の選択も違うので、覚えるのがとても大変です。4年目の今も、日々勉強ですね。

また、現在私は大学院の病理の研究室にも所属しています。がん診療を行う立場として、組織を自分で見て診断をつける経験を一度はしておきたいと思ったからです。臨床と研究の両立は大変ですが、勉強になります。

――今後の展望を教えてください。

:来年度は市中病院に出ることになりそうなので、外来で初診から診て、検査を行い、診断をつけ、治療方針を定めるという一連の流れを自力でできるようになることが目標です。さらに、今後は男性不妊症などの性機能の分野をもっと勉強したいと思っています。性機能に関することは、大規模な病院よりは専門のクリニックなどに患者さんが集まるので、いずれはそういうところでも学びたいです。

――最後に、医学生に向けてメッセージをお願いします。

:授業ではなかなか泌尿器について学ぶ機会がないと思いますが、外科系の科だという認識は持っておいてほしいです。さらに、排尿ができるかどうかは命にも直結します。術後に尿が出ない、詰まって腎臓が腫れてしまったなど、他科から紹介されてくる患者さんも少なくありません。専門性が高いからこそ、「泌尿器科にしか治せないところがある」という誇りを感じることができますよ。

また、女性の患者さんは女性医師を希望することも多いです。短い手術も多く、ワーク・ライフ・バランスを保つのも決して難しくはないので、ぜひ女性にも来てほしいと思います。

 

医学部卒業2015年
岩手医科大学医学部 卒業
学生の頃から、泌尿器科の先生方には食事に連れて行っていただくなどお世話になっていました。
卒後1年目 県立久慈病院
臨床研修
年に数回、岩手県主催の勉強会が開かれていたので、そこで他院の研修医とも交流する機会が多くありました。
卒後3年目岩手医科大学医学部泌尿器科講座 専門研修
岩手医科大学大学院医学研究科
病理診断学講座 入学
卒後4年目岩手医科大学医学部泌尿器科講座
岩手医科大学大学院医学研究科
病理診断学講座
大学院での研究テーマは腎がんですが、それ以外にも泌尿器系のがんの組織はすべて診ているので、とても勉強になります。

 

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塩見 叡先生
2015年
岩手医科大学医学部 卒業
2019年1月現在
岩手医科大学医学部 泌尿器科学講座

No.28