グローバルに活躍する若手医師たち(前編)

日本医師会の若手医師支援

JMA-JDNとは

Junior Doctors Network(JDN)は、2011年4月の世界医師会(WMA)理事会で若手医師の国際的組織として承認されました。JDNは、世界中の若手医師が情報や経験を共有し、未来の医療を考えて行動するための画期的なプラットフォームです。日本医師会(JMA)は2012年10月に国際保健検討委員会の下にJMA-JDNを立ち上げました。これまで若手医師の集まりは学会や医局、地域、NGOなどの枠組みの中でつくられてきました。JMA-JDNは、多様な若手医師がそれらの枠組みを超えて、公衆衛生や医療分野において自由に自分たちのアイデアを議論し行動できる場を提供したいと考えています。関心のある方は検索サイトやFacebookで「JMA-JDN」と検索してみてください。

今回は、JMA-JDNの若手医師より、マレーシアで開催されたCMAAO・JDNミーティング、アイスランドで開催されたJDN会合の報告と、ドイツへの留学体験記を寄せてもらいました。

 

アジア大洋州地域の若手医師が集う
~CMAAO、JDNミーティングの開催~

青葉アーバンクリニック、JMA-JDN 役員、WMA JDN 国際役員 三島 千明

2018年9月12日から14日まで、アジア大洋州医師会連合(Confederation of Medical Associations in Asia and Oceania, CMAAO)マレーシア総会が開催されました。そこでJDNミーティングが開催されましたので、ご報告いたします。

CMAAOとは、アジア大洋州地域の医師の交流や、保健水準の向上を目的に、1956年に設立された組織です。 現在では19か国の医師会が加盟し、世界医師会(World Medical Association, WMA)の地域医師会連合として、アジアからの発信の役割を担っています。

数年前から、より若い世代の意見を取り入れるべく、JDNが継続して参加してきました。そこからJDNの活動がアジアに広がり、この1年の間にインドネシア、マレーシアといった国々でJDNが立ち上がりました。その結果、今回のJDNミーティング開催に至り、7か国から30名の若手医師が集まりました。

今回のテーマは“Workplace bullying and harassment” (医療職場でのいじめとハラスメント)でした。これらには暴力のほか、言葉によるものや性的なハラスメント等も含まれます。指導医によるハラスメントは訴えづらく、各国の課題になっています。各国のJDNがそれぞれの国の状況について発表し、マレーシアのJDNからは、マレーシアでの実態の共有、専門家や医学生を交えたディスカッションが行われました。行政や医師会レベルでの相談窓口の設置、若手医師がどう対処するか知識を持つこと、医療者同士・また医師ー患者間で良い関係性を築くトレーニングの必要性等について様々な意見が挙がりました。そして、Declaration against bullying and harassmentという宣言が採択されました。

今後もアジアのJDN とネットワークを発展させ、多くの方に国を超えて学び合っていただけるように、運営に取り組んでいきたいと思います。

 

三島 千明
島根大学卒業、北海道家庭医療学センターで後期研修修了。現在は横浜市、東京都内で在宅医療、外来診療に取り組んでいる。

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地域での診療に従事しながら、JMA-JDN の活動に参加してきました。新しいメンバーも増え、活動が盛り上がりそうです。

 

アイスランドでの世界医師会総会に出席して

King's College Hospital. Fetal Medicine(英国)、NPO法人親子の未来を支える会代表理事、JMA-JDN役員(国際) 林 伸彦

2018年10月3日から6日まで、世界医師会総会がアイスランドの首都レイキャビクにて行われました。総会に先立ち、JDNの会合も行われ、世界各地から約20名の医師が出席しました。各国の卒後研修の仕組みについて情報交換があり、経済的理由または国の規模を理由に、自国のみで卒後の専門研修を行えない医師がいるという課題が挙がっていました。また、医師の燃え尽きについて、次期アメリカ医師会長のPatrice A. Harris先生より講演がありました。米国では医師の54%が燃え尽きを経験したことがあると報告されているそうです。診察以外の事務作業等がストレスの原因になっていること、医師の燃え尽きは患者の治療効果に悪影響を及ぼすことも明らかになっており、患者の安全を守るためにも改善が必要であるとの認識が重要です。燃え尽きを個人の問題ではなく構造的な問題として捉え、改善に取り組む必要があると感じました。

総会では、現代社会の抱える諸問題について議論がなされました。議題は、遺伝子と医学、バイオ医薬品、死刑、拷問、男女産み分け、安楽死とPhysician assisted dying(医師の支援による死亡)、ビニール袋・エコロジー問題と環境悪化、医師のプロフェッショナル・オートノミー、母子健康手帳の開発と普及、疑似科学・擬似療法・医療への侵害およびカルト団体、抗菌薬耐性、人間医学と獣医学の連携、人工知能、未成年の亡命希望者など多岐にわたりました。

今回の総会で、日本医師会の横倉義武会長が世界医師会長の1年間の任期を終えられました。その活動報告は大変に充実したものであり、その功績が各国から讃えられました。

各国の法や宗教・歴史的背景などが異なるなかで、世界医師会としてどのような宣言・勧告などを出すのか、その審議のプロセスに触れることができました。そして法や個々の考えを越えて、純粋に今「医」がどうあるべきかという理想を追う姿に感銘を受けた4日間でした。

 

林 伸彦
東京大学で発生学を学んだ後、千葉大学医学部へ学士編入。千葉県内で研修後、ロンドンの大学病院で胎児医療研修中。

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アイスランドでは夕食後にオーロラが見れました!

※先生方の所属は2019年1月現在のものです。

 

グローバルに活躍する若手医師たち(後編)

留学のススメ
~百聞は一見に如かず~

ブランデンブルク心臓病センター リサーチフェロー JMA-JDN 役員(国際)
岡本 真希

皆さんは、留学というとどのようなイメージをお持ちでしょうか?なんとなくカッコイイと憧れる部分と、でも英語が苦手だから…と抵抗を感じてしまう部分の両方があると思います。ドイツに留学して1年半の私が、未来ある医学生の皆さんにお勧めしたいのは、考える前に「まずは行ってみること」です。自分から行動しない限り、「いつか留学してみたいなぁ」、の「いつか」は永遠に来ないのです。

日本にいても最新の医学や技術は十分学べます。しかし、留学で学べるのは海外の医学だけではありません。例えば、日本には以心伝心という四字熟語が存在し、行間を読むスキルが重んじられますが、海外において黙っているということは「意見がない」のと同義です。遠慮しているとやる気がないと判断されチャンスを逃してしまいます。反対に、自分が何をしたいのか、どんな協力をしてほしいのかを明確に発信できた時には、きちんとサポートしてもらえます。日頃からアウトプットが求められる環境に身を置くことで、自分の考えを整理してわかりやすく伝えるスキルが磨かれます。海外の医師とふれあうなかで一番実感したのは、彼らは講義や日頃のディスカッションにおいて、話の要点をつかみ自分なりに解釈し、それに対して自分の意見を論じるという能力が、圧倒的に優れているということです。彼らは講義中ですら質問し、時に質疑応答に長蛇の列ができることもあります。そんな活発な論議はとても刺激になります。

さらに、様々な視点と価値観に触れることができるのも留学の醍醐味だと思います。全く違う環境を経験するからこそ、改めて日本の良さや改善点に気付けたりします。留学は大変なことも多いですが、成長できるチャンス。まずは学生のうちに短期留学だけでもぜひ「体験」してみてください。

 

岡本 真希
洛和会音羽病院にて臨床研修修了。2017年よりドイツ・ブランデンブルク心臓病センター研究留学中。循環器内科。

message
ドイツはもうすぐクリスマスマーケットで街が華やぐ時期です。楽しみ!

 

 

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※先生方の所属は2019年1月現在のものです。

 

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