医学科1年生
同世代のリアリティー

コロナ禍で入学して 編(前編)

医学部にいると、同世代の他分野の人たちとの交流が持てないと言われています。そこでこのコーナーでは、別の世界で生きる同世代の「リアリティー」を、医学生たちが探ります。今回は特別編として、コロナ禍で医学科に入学した1年生5名がオンライン座談会を行いました。
同世代

今回のテーマは「コロナ禍で入学して」

今回は、新型コロナウイルス感染症の流行下で医学科に入学した1年生に集まってもらいました。各大学の状況や学生生活における難しさ、オンライン授業のメリット・デメリットなどを自由に話してもらいました。

コロナ禍で始まった大学生活

井上(以下、井):今年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、予想していたものとは異なる大学生活のスタートとなりましたよね。僕たちの通う旭川医科大学では入学式がなかったので、初めて大学構内に入ったのは4月の終わりの教科書販売の時でした。ソーシャルディスタンスを保って順番に購入し、終わったらすぐ帰るという形で、新しく友達ができるような感じではありませんでした。

三好(以下、三):次に大学に行ったのは7月の終わりでしたね。その時に初めて同学年の皆と顔を合わせました。今は学年を二つのグループに分け、対面とオンラインの授業が交互に行われています。

小玉(以下、小):私の通う山形大学は、直前まで入学式が行われる予定でした。結局中止になりましたが、4月上旬には二部屋に分かれてオリエンテーションを行いました。また、医学部の授業と一般教養の授業を受けるキャンパスが分かれているので、4月にそれぞれのキャンパスに教科書を買いに行ったりもしました。その後は、8月に健康診断や試験がありました。試験の時に初めて学年全員が顔を合わせたのですが、初対面が試験ということで、まるでセンター試験のようにピリピリしていましたね。10月からはほぼ全面的に対面授業が再開しました。

杉浦(以下、杉):杏林大学では入学式もオリエンテーションもなくなりました。教科書と課題が送られてきて、4月は自分で勉強をしておくという感じでした。5月からオンデマンド講義が少しずつ始まり、7月にようやくオリエンテーションが行われました。オンラインと対面の併用だったので全員参加ではありませんでしたが、学年の8割くらいが顔を合わせました。その後の授業もオンラインと対面の併用で、友達の輪が広がる感じはありません。

芹澤(以下、芹):東京女子医科大学では、6月からの授業再開に備えて、学生全員がPCR検査を受けました。その後は、分散登校で2週間ずつ登校し、テストは全部対面で実施されています。しかし、対面授業の様子はオンデマンドでも配信されますし、実習もほとんどが見学なので、登校しなくてもいいのではないかと思ってしまいます。

オンライン授業と対面授業皆はどちらが好き?

:僕は家だと集中できないので、対面で行ける授業は必ず出席するようにしています。オンライン授業だと開始直前に起きても参加できて便利ですが、その後眠くなってしまったりして生活リズムが崩れるので、登校するほうが良いように感じます。

:オンラインだと自分のペースで学ぶことができるので、空いた時間を好きなことに使えるのは良いなと思います。ただ、グループディスカッションがやりにくいことは短所かもしれません。全員黙った状態が続くことも多いので、自分から率先して発言するようになりました。

:大学でオンライン授業についての学年アンケートが行われたのですが、オンラインは画面がきれいで、PDFの講義資料に書き込みながら落ち着いて受けられるという意見がありました。今後、こういうスタイルで授業を行うのも選択肢の一つなのではないかと感じました。

:オンデマンド講義は自分の好きな時間に、何回も繰り返して見ることができるのが良いですね。ただ、周囲とコミュニケーションが取れないので、心細く感じることもあります。対面授業は、わからないところを皆と共有しながら受けられるのが良いところだと思います。

:対面だと、「大学に入ったなあ」という感じがするのが一番大きいですね。総合大学なので、他の学部の学生と一緒に授業を受けることもあり、世界が広がったように感じます。

友達作りにおけるSNS活用術

:しばらくは大学での交流がなかったので、僕はTwitterで検索して、先輩や同級生をフォローするようにしていました。反応をくれた人とメッセージのやり取りをして、その後LINEの連絡先を交換したこともあります。4~5月はそうやって積極的に友達を作りましたね。

:Twitterは「春から○○大」というハッシュタグを検索すると、同じ大学に入学する人のアカウントを探すこともできますよね。私は地域枠のつながりで会った子たちとTwitterでつながったら、そこから多くの人とつながることができました。「大学から資料が届いた」などの情報が入ってくるのは助かりました。4月の半ばには、Twitter経由で学年の3分の2が参加するLINEグループもできました。

:Twitterのタイムラインを見ていて、課題の期限に気付けたことがありました。また、学年のLINEグループに自己紹介を書き込んで、そこで趣味が合いそうな人に個別に声をかけたりもしました。部外者が入ってくることがないLINEのほうが、Twitterより安心して自己紹介ができると感じます。

:私は大学に入るまでSNSを使ったことがなく、アカウントの作り方も知らなかったので、皆さんすごいなあと思います。私は下宿に住んでいて、そこで他学科の友人ができたこともあり、SNSは積極的にやりませんでした。

 

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同世代のリアリティー

コロナ禍で入学して 編(後編)

大学によりけり 部活の新歓

:部活の新歓はどうでしたか? 旭川医大では学年のLINEグループに、先輩がオンライン新歓の案内を流してくれました。オンライン新歓では1年間の活動などの説明があり、興味を持った人はオフラインの新歓にも参加していました。

:私も学年LINEグループで案内がありました。各部活の先輩がグループに入室し、一通り説明をしたら退室するという流れで、ほとんどの部活の説明を受けました。山形大では屋外の部活は6月から活動を再開したので、こういう活動も早かったと思います。すでに学年のうちのかなりの人数が部活に入っています。

:4~5月はSNSでの勧誘やオンライン新歓も行われていたのですが、結局、今年度はまったく部活ができないことになったので、今はどこの部活も勧誘はしていません。部活に入りたければ、来年の1年生と一緒に入部することになりました。

:杏林大では新歓が中止されたので、部活のことは何も知らない状態です。入部するとしたら来年という感じですね。

先輩と出会う機会がないと過去問情報も得られない

:例年は先輩から試験の情報を教えてもらえるのに、今年はうまくいかないという大学も多いのではないでしょうか。東京女子医大では、いつもなら留年生が試験対策をしてくれるのですが、今年度はたまたま留年生がおらず、皆何もわからない状態です。先生にも打診してみたのですが、開示できないと言われてしまいました。

:予備校に通っていた人は、先輩から資料をもらったりしていたそうです。私はそういうコミュニティがなかったので、何も情報を得られませんでした。そこで、対面の授業が始まってから、大学側に「1年生と先輩とのつながりを作ってほしい」と打診したところ、4年生の先輩とのつながりを、オンラインで作ってもらえるようになりました。

:旭川医大は公式ではないのですが各学年に試験対策委員会があり、過去問を下の学年に伝えていく仕組みができています。三好さんがその委員長です。

:先輩から「やってくれる人はいませんか」と募集があり、過去問の勉強もできて、つながりも作れるなら良いなと思って立候補しました。

思い描いていた大学生活ではなかったけれど…

:授業は不自由ですが、趣味やバイトはできているので、僕は今の生活にそこまで不満はありません。皆はどうですか?

:下宿先の友達はできましたが、医学科内のつながりがあまりできていないので、想像していた生活とはちょっと違うなあという感じはしています。ただ、読書などの趣味に使える時間が多いのは良いなと思います。

:対面授業が始まった今のほうが、空きコマにカフェに行くなど、よく思い描かれるようなキャンパスライフができているように感じます。

:夏休みには、部活やバーベキューなどの楽しい行事があると思っていたのに、それがなかったのは残念でした。対面授業が始まっても、机に仕切りがあって、友達と一緒に授業を受けるという雰囲気でもないので、不便はあるなという感じです。

:私はずっと参加したいと思っていた医療系団体に入り、オンラインイベントなどに積極的に参加しています。また都内で人混みに出られない分、逆に身近なイベントに参加できていて、これはこれで楽しいです。

:イベントがオンラインになり、旅費などを考えずに最先端の先生方のお話を聞ける機会ができたのは良かったですね。

:オンラインイベントに何回か参加していると、同じ興味を持っている人と何度か一緒になることもあり、そこから交流できるのも良いなと思います。

:私も色々な団体のオンラインイベントにできるだけ参加してみました。色々見てから興味があるところを探せるのは、大きな収穫かもしれません。

 

※この内容は、今回参加した学生のお話に基づくものです。
※取材は2020年10月下旬に実施しました。医学生の学年は取材当時のものです。

 

No.36