授業探訪 医学部の授業を見てみよう!【前編】
鳥取大学「基礎手話言語」「医療手話言語」
学生同士でやり取りしながら手話言語を学ぶ
基礎手話言語では、挨拶や自己紹介、数の数え方や指文字といった基本的な手話言語を学びます。テキストに頼りすぎず、学生同士がやり取りしながら学ぶため、すぐに実践に活かすことができます。
医療現場で実際に使える表現を身につけられる
医療手話言語では、受付・診察・検査・治療・投薬といった、病院における一連の流れのなかで必要となる手話言語を学びます。実際にやってみることで、相手の意図を読み取り、自分で表現する力を育みます。
障害のある方が何に困るかイメージできる
授業では、耳の聞こえない方が医療現場で実際に困っていることを教えていただく機会も設けています。これにより、聴覚障害に限らず様々な障害を持った方が、何に困る可能性があるのかを考える力が身につきます。
(写真中央)問診時の表現を解説する石橋先生。
(写真右)最後に皆で集合写真を撮りました。
授業探訪 医学部の授業を見てみよう!【後編】
INTERVIEW 授業について先生にインタビュー
手話言語を学ぶことで患者さんへの想像力を育んでほしい
「基礎手話言語」は2008年に1年次前期の必修科目として、「医療手話言語」は2009年に後期の選択科目として始まりました。この授業ができたきっかけは、医学部キャンパスで6年一貫教育を実施する際に、コミュニケーション教育を重視したカリキュラムに変更したことでした。その際講師として、ろう者である鳥取県聴覚障害者協会の石橋大吾先生を迎えることで実践的に手話言語を学ぶ体制が整いました。
基礎手話言語では、日常生活で使う手話言語を学びます。例えば「いつ・どこ・誰・何」などの疑問詞を使った会話表現は医療面接でも基本となります。医療手話言語では、医療現場で役立つ手話言語の習得を目指します。発熱や心筋梗塞などの症状や病名の表現も学びますが、五十音に相当する指文字は、手話言語が思い出せなくてもコレステロールのような医療用語を表現できるので便利です。こういった単語や指文字の習得に加えて、将来医師になった時に聞こえない患者さんと情報交換できるよう、手話言語の読み取りや、伝わりやすい適切な手話言語の表現を考えることも重視しています。
授業では手話言語だけでなく、聞こえない方が社会で抱える課題や、病院で安心して診療を受けるために必要な配慮についても学びます。この授業を通して培った洞察力や想像力は、将来医師になった時、患者さんの求めていることや、その背景を見極めることにも役に立つことでしょう。
手話が言語として認知されるのに伴って、いずれは手話言語の授業が医学部のコミュニケーション教育として当たり前になることを希望します。そのモデルに鳥取大学がなれればと思っています。
海藤 俊行先生
鳥取大学医学部 解剖学講座 教授
石橋 大吾先生
鳥取大学医学部 非常勤講師
学生からの声
初対面の方とも手話で話せました
2年 井上 晴奈
もともと手話に興味があったのですが、この授業を受けたことで、アルバイト先に聴覚障害者の方がお客さんとしていらしたときに、気後れせず手話で話しかけることができました。とても喜んでくださり、やはり手話でのコミュニケーションは喜んでいただけるのだと実感しました。
考えて表現する大切さを学びました
6年 高橋 知也
手話はただ単語を覚えたら良いのではなく、自分が何を伝えたいかをきちんと考えて表現する必要があるのだと気付きました。特に医療現場では、患者さんに誤解のないようにわかりやすく伝えなければならないことも多いので、よりしっかり考えなければと思いました。
手話を学ぶ意義に気付きました
1年 大村 愛実
ボランティアで聴覚障害を持つ子と話せなかった悔しさから手話に興味を持ち、この授業を行っている鳥取大学に入学しました。授業では聞こえない方の人権が守られてこなかった歴史や事例についても学び、将来を担う私たち学生が手話を学ぶことの意義を感じています。
理想の医師像がはっきりしました
1年 齋藤 澪花
私は今までただ漠然と、どんな人でも助けられるような医師になりたいと思っていました。この授業を通じて、聞こえない方が病院で困ることがないよう、不安をなくせる医師になりたいと強く思うようになり、自分の理想の医師像がはっきり固まったと感じます。
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